2-36【自由騎士団リューズ3】+用語その1
◇自由騎士団リューズ3◇
さっき、俺は残りの二人はショックを受けていそう……そう言ったけど、正確には明らかにショックを受けていたのは、ジュンさんだけだったと思う。
リディオルフさんは、何となくだが……興味がなさそうに見えた。
「――ですが……旦那様は違います!」
エルフの女騎士、ジルリーネ・ランドグリーズさんは言う。
「確かに、国からは命令が出ませんでした……理由は明らかではありませんが、三人くらいは……という事なのだと、わたしはそう取りました」
三人……くらい?
奴隷だぞ……!?国民が攫われて、奴隷にさせられていたんだぞ!前のめりに首を突っ込んでいくくらいしなきゃダメだろ!
ましてやこんな世界だ、“剣と魔法がある異世界”……直ぐに国際問題になったっておかしくはないはずなのにっ!
「ですので……わたしは旦那様の了承を取り……こうして【テゲル】の方へ馬を向けたのです」
いやいや、ここは【テゲル】じゃねぇよ。
一応ここは、【サディオーラス帝国】って国だ。
多分、領土的には【リードンセルク王国】の方が近いんだろうけどさ。
「――【テゲル】の敗残兵たちは、そこのクラウとミオが捕縛して、捕らえてありますじゃ……」
「――おおっ!さすがはわたしと互角に戦った戦士だ……【テゲル】の兵を殺さずに捕らえたとはっ」
褒められてるけど、全っ然嬉しそうじゃないなクラウ姉さん。
もしかして、互角かな?互角って所が気にくわなかったのかな?
おっと……だからさ、それで俺を睨むの止めろよっ!ビビるから!
「……」
ミーティアさんは、静かだな……そう言えば。
あ、因みに俺は玄関の傍にいるよ。
ミラージュさんとレイン姉さんと一緒にさ。
ミーティアさんは、エルフの騎士さんが連れて隣に座らせてた。
まるで蚊帳の外みたいだな、俺。
「ジルリーネ……私たちは、帰れるの?」
「それは勿論です、お嬢様……」
それはそうだろうな。国はそもそも、知らない関係ないを貫こうとしてるんだ。
だったら、別に勝手に帰ったって関係ないだろうよ。
だがミーティアさんは、国を代表する大商人の娘さんなんだろ?
それって、普通に考えれば国の利益にも影響が出るはずじゃないか……?
どうして、そんなやすやすと無視を決め込めるんだよ……
「……」
ジュンさんは最初に会った時のような顔をしていた。
全てを諦めたような顔だ……やはり、国の対応にショックなのだろう。
「わたしは一度戻り、馬車を用意してからもう一度訪れようと思いますが……お嬢様」
「ええ。私はそれまでここにいるわ……お父様には、よろしく言っておいて。それと……」
ミーティアさんはエルフの騎士さんに耳打ちをしている。
一瞬だけ俺を見たから、多分“あの話”なのだろう。
やっぱり、諦めてないみたいだな……逞しいね。
「え……それはまぁ、か、構いませんが……本当によいのですか?」
「ええ、いいわ。お父様も、きっと分かってくれる。次にあなたが来るまでに、私が話を進めておくから……お願い」
「……はい。かしこまりました」
おーい。いいのかそれでエルフの騎士さんよ。
それにしても……それを言わせられるミーティアさんって、もしかして凄い権限でも持ってんのか?
それとも……この状況を良しとしていない?
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・【澪から始まる】用語その1
【無限】。正式名称【object・slider・resource・∞】。
主人公ミオの能力の一つ。ミオの視界に映る物体の資源数値を、自由に変更して操る事ができる。
操作できる項目は無数にあり、その組み合わせはまさに無限に等しい。
物を大きくしたり小さくしたり、幅を広げたり狭めたり、硬度を変えたり、威力そのものも変更できる。
ミオのイメージとしては、一人称視点のゲームのUIのような画面であり、指でスマホ画面をスライドさせるような仕草で発動させている。
その発動基準は、この世界の魔法に酷似しており、ミオはこの能力の事を、土魔法と言って家族に伝えてある。
数値を変動させるたびに魔力を消耗するらしく、非常に使い方を選ぶ能力ではある。
ちなみに人体や、火や水と言った自然エレメントには作用しないが、地面だけは物体として認識されており、使用が可能。




