2-27【案内しましょうか?何もないですけど】
◇案内しましょうか?何もないですけど◇
レイン姉さんが用意していたのは、お弁当だった。
野菜のサンドイッチだ。うまそう。
それをバスケットに入れて……でも、多くないか?
「よし、と。これで準備は出来たわね」
「レイン姉さん、そのバスケットさぁ……」
俺はレイン姉さんが両腕に下げたバスケット、その片方を指し。
「え、これ?やだもうミオったら。集会所にいる方たちの分に決まっているでしょう?」
「……あ~」
いやうん。想像は付いてたんだ。
でもさ、俺や家族にしか知らない事もあるから。
実を言うとさ、このレイン姉さんは……めちゃくちゃ大食いなんだ。
だから家族的には、バスケットが二つあったらそれも食うのかなって……思うじゃん!?
「ほら、行きましょう……?」
「あ、うん」
そうして、俺とレイン姉さんは集会所に向かうのだった。
またミーティアさんに会える……心の片隅で、そう思いながら。
◇
少し歩き、一度小屋に荷物を置いた俺とレイン姉さんは、集会所に入った。
中では奴隷にされていた男が、我が物顔で寛いでいて、その態度に少しばかりムッと来たがスルーした。
流石に心が狭いよな、それだとさ。
「――あっ……ミ、ミオくんっ!」
おっと、ミーティアさんだ。よかった……元気そうで。
前日にあの話を待ってもらった際は、少し元気がなさそうに見えたからな。
「おはようございます、ミーティアさん」
「お、おはようっ」
ニッコリ笑ってくれるミーティアさん。でも、少しぎこちないかな?
だけど、なんだかそれがやけに……健気に見える。
「――ねぇ。あたしにはー?」
ん?ああ、もう一人の……えっと、名前名前……確か……あれ?
「おはようございます……えっと」
ごめんなさい、マジで忘れた。
「ええ~、自己紹介したじゃない……ジュンだよ、ジュン・ジョルラフ」
「す、すみません……ジュンさん」
そうだった、ジュンさんだ。
褐色肌のジュンさん。何というか、健康的です。
「……僕はリディオルフ・シュカオーン、リディでいいですよ」
あぁそうかい。俺からは聞いてねぇけどね?
「あの、ミオくん……」
「はい?どうしましたか、ミーティアさん……」
何でも聞いてくださいよ、答えますよ?言える範囲でなら。
「えっと……私、この村を……見て見たくて」
ほうほう、この村を?
「村、ですか?」
でもいいのか?正直言って、何も無いぞ?
「ダメ……かな?」
――!!い……いいですとも!
「分かりました。案内しますよ……僕たちの村を」
「わぁ……ありがとう!」
そんな笑顔をされちゃあ、案内しない訳にもいかんだろ。
……敵わないよな、女の子の笑顔には……まったくさ。




