2-26【どうなるんだろうな?】
◇どうなるんだろうな?◇
それにしても、村長の息子。
オイジーが、結婚して子供も産まれるのか……あの顔だけはよくて、性格のねちっこい奴がなぁ。
そんな奴に惚れたのがどんな相手だろうと気になる気持ちもあるが、まぁ俺があいつに会う事もないだろうし、気にしても意味はないな。
「それで、今日はその返事を伝えに村長の所に行く……クラウは付いてきなさい」
「――え」
ああ、嫌なのね。
すんげー顔してる……眉間の皺よ。
「なんだ、文句があるのか?」
「……いえ、別に」
そりゃそうだ。昨日の今日で、また怒られたくないよな。
こういう時は素直に従うこった。
「……奴隷にされていた人たちの話も聞かねばならないし、ミオはそっちに行ってくれるか?」
「――え?僕?……学校は?」
何故?てか学校はどうすんだ?
「今日は学校もいい……仕事だと思って動いてくれ。いいな?」
「――!……わ、分かった!!」
マジか!堂々と学校休めるパターンのやつやん!!
これなら進んで手伝うっつーの!ナイスだぜ父さんっ!
「そうか、じゃあレインと一緒に……集会所に行ってくれ」
「はい」
「うんっ」
「はーい」
クラウ姉さんもう完全にやる気ないな。
寝転がってんじゃん。
「よし、じゃあ行くか。クラウ」
ムクリと起き上がり、嫌々返事を言う。
「……はいはい……」
「はいは一回だ」
「はーーーーーい!」
「――長い!」
「……はい」
(もう、パパウザい……)
俺はそのやり取りを見ながら笑う。
「あはは……」
分かってるよ。ウザいって思ってんだろ?
絶対にそうだって、そういう顔してるよ。
女の子って、思春期に父親嫌う率高いよなぁ……
◇
父さんとクラウ姉さんは村長宅に向かった。
俺等も……そろそろ行くか。
堂々と学校休めるし。
「レイン姉さん……準備……」
レイン姉さんは台所で何かを――って、いい匂いだな。
何だろう、これ。
「あ~ミオ。ごめんね、もう少しだから……先に行っててもいいわよ?」
「いや……待ってるよ。何してるの?」
俺はレイン姉さんの後ろから顔を出して、手元を覗く。
狭いんだよ、うちの台所さ。
水道もない、洗い場って言う洗い場もない。なのに狭い。
もうさ、【無限】でどうにかしたいレベルなんだが。
でもそれをしては、俺が力を隠している意味がなくなるしな。
まぁ……工夫をすれば何とかなるのだが……クラウ姉さんがいるからバレるじゃん?
「あら……?ミオ」
「え?――な」
レイン姉さんの顔が近い。
狭いんだからそうだろうけどさ、もう本当に無防備だよこの人……クラウ姉さんもレイン姉さんもさ、本当に俺を男として見ないよな。
すまん……クラウ姉さんはちょっと違うわ……あの人はちょっと違う。
ごめん。ちょっと逃避してた。
「ミオ、本当に大きくなったね。お姉ちゃん追い越されちゃいそう」
「い、いやいや……まだ頭一つ分あるから。ち、近いよっ」
「え~、なに照れちゃって……可愛いなぁ~もう」
俺の額をツン――っと押して、レイン姉さんは笑う。
クッソ、可愛いのはそっちなんだってぇぇぇ!




