2-13【俺と彼女の出会い1】
◇俺と彼女の出会い1◇
混乱する兵士二人の焦りっぷりときたら、抱腹絶倒だったよ。
土の壁の向こうにいる奴隷たちも驚きと戸惑いの声を上げていた……ガチで驚いている者、意外そうに声を出す者。
そして、周囲を確認してこの状況を飲み込もうとする者。
三者三葉の、様々な反応だった。
「――くそっ……足が!」
抜けねぇよ。土壌の軟度と粘度、それから接地面の強度を上げてる……ただの泥に見えて、実際は固まる直前のコンクリートのようなんだからな。
さてと、ここで俺も登場しておきますか。
俺は一人、小さく咳払いをして、兵士たちの前に顔を晒した。
「――こんばんわ。もしかして軍人さん……ですか?」
「だ、誰だっ……!!」
「お、おい……落ち着けって、ただのガキだ……その辺の村のだろ」
悪かったな……その辺の村の子供で!!
それでも転生者なんだよっ!たとえド田舎の出身でもな!!
「いったいどうしたんですか?そんなに慌てて……お困りのようですけど?」
俺は善人のように……いや、善人だよな?
とにかく近付き、兵士の様子を確認する。
――よし、大丈夫だ……障害はない。
「おいガキ!何かここから出られるものを持って来い!」
は?おいおい……立場分かってますぅぅぅ!?
お前らは動けない、俺は動ける。もう分かるよなぁぁぁ!?
「あれ……?動けないんですか?おじさんたち、大人ですよねぇ……僕のような子供に頼るんですかぁ?」
へへへ……煽っていくスタイル。
気持ちのいいもんだな、前世でやられてたらイライラマックスだが、ここは異世界なんだなぁこれが!
あ、普段はしないぞ?勘違いすんなよ?相手が相手だからな。
「――このガキっ!!」
おっと、剣を抜こうってか?
させねぇよ――【無限】発動!
「――ぐっ……け、剣が抜けねぇ……」
「お、俺もだ……なんで!」
簡単だ。そのボロっちい剣の幅を、ほんの少しだけ広げてやっただけさ。
だけど、たったのそれだけでも……鞘にめり込んで抜けないだろ?
「おじさんたち……子供相手にムキになりすぎですよ?」
さて、どうするかな。
このまま首まで泥に沈めてやってもいいけど、それだと前と同じだしな。
あ、そうだ……このまま地面を変形させて、牢屋でも作ればいいんじゃないか?なるべく深く、広く作って……クラウ姉さんがボコしてる奴らも収容出来るようにしておけばいいんだ。
「――と、いう訳なので……おやすみなさい」
俺は兵士二人に笑顔で言う。
【無限】を使うにも魔力が必要だからな、さっさと終わらせよう。
「はぁ!?」
「なん……だ……」
音もなく、ゆっくりと沈んでいく二人の兵士。
地面の高低数値を徐々に下げていき、更にそこから横に広げて、地下室のような空間を作った。
そこに小さな小窓程度の穴……排水溝みたいな穴だけを残して、終わりだ。
いやー、メイキングって面白いよね。好きだったんだよ、キャラメイキングで色々作るの。
今はどちらかと言えばクラフトだけど。
「……ふぅ。少し疲れたな……魔力か?」
コキコキと首を鳴らして、俺は疲れた理由を探る。
おそらく魔力の使いすぎだと決め込んで……土の壁を見る。
後は、あの向こうにいる奴隷たちだな。
土の壁の数値を戻して……っと。
「大丈夫ですか……皆さ――ん!?」
驚いたよ……急すぎて。
その衝撃は、十二歳の子供が耐えられるものじゃなかったんだ。
ああ……後ろにぶっ倒れたよ。
誰かと一緒にさ。
ドン――!と……俺の胸に、誰かが飛び込んで来たんだ。
涙声で、感謝の言葉を叫びながら……さ。




