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主人公のさりげない独占欲

 



 「______ッ」




 群青色の短い髪の愛おしい我が君が、大きな緑色の綺麗な瞳を見開いて、顔を赤らめている。




 わたくし、今とても変な顔をしている。




 ……………セオドア様が下さるものはどれも可愛くて甘くて綺麗で、芸術だ。どれも大好きだし、どれも大切なものだ。




 けど。




 今貰ったものは_____1番、1番嬉しかった。



 愛する人お手製のウェディングドレス。ユートピア1の職人が作ったものでも、歴代の女帝が代々着たドレスでもこのドレスには敵わないだろう。





 言葉が、出ない。

 プレゼントでこんなに苦しくて、声すらでなくて、…………幸せな気持ちになれるものなのですか?




 わたくしは、そのドレスをどこに置こうか迷う。今すぐに抱き着きたい。けれど、どこにも置きたくない。誰にも触れさせたくない。どうすればいいのかわからないでいると……………………ふわり、大きな身体がわたくしを抱きしめたのだ。




 大好きな感触、大好きな香り____大好きなセオドア様が、わたくしを抱き締めていた。



 セオドア様は堪えるように、ドレスを抱き締めるわたくしを、強く優しく抱き締めながら、か細い声で言った。





 「俺______早く結婚したい。アミィのその顔をずっと隣で見ていたい。



 アミィ、本当に_____俺を愛してくれて、ありがとう」




 「ッ…………………セオ様、わたくしの台詞を横取りしないでください。



 わたくし、それ以上の表現の仕方、これしかわかりませんもの_____」




 アミィールはそう言って、抱き締めるセオドアを押して、無理やり唇を奪った。



 そんなふたりは、泣きながら、それでも幸せそうにお互いの唇を求め合った。






 * * *




 「セオ様」



 「なんだい?」




 レイに言われて、やっと離れて部屋に入りソファで肩を寄せ合う2人は話す。アミィールの腕の中には未だにウェディングドレスが抱き締められている。




 「このドレス、不思議です。白なのに、セオ様の色が見えるのです」



 「嗚呼、それはね、アルティア皇妃様に相談して、"魔力を混ぜてみれば?"と助言を頂いたんだ」




 そう、ドレス作りをしていると何処からか聞きつけてきたアルティア皇妃様が突然来て、相談に乗ってくれた。そしたら、物にも魔力を宿すことが出来ると言われたのだ。



 勿論、アルティア皇妃様の手は借りていない。やり方を教えて貰い、最近使えるようになった強い水魔法と緑魔法を白いドレスに練り込んだ。やった俺でも気づかなかったのに、アミィール様は一目で気づいたのだから敵わない。



 さりげなく俺の色を混ぜたのをバレると超絶恥ずかしい。




 そこまで考えて、セオドアはかあ、と顔を赤くする。そんな愛おしい人を見て、アミィールは意地の悪い笑みを零した。





 「…………………セオ様の色が、隠れているのって、素敵。まるでわたくしを縛るようですね」



 「な、そ、そういう訳では…………!」




 「あら?そうじゃないのですか?」




 そう言うアミィール様の上目遣いに元々熱い顔の熱が更に上昇。


 ほんと、この顔、反則過ぎる……!言っていることがほぼ王子様の意地悪なのに、顔が女の子だからもうほんと……静まれ俺の息子……!



 セオドアはさりげなくクッションで下半身を隠しながら、消えそうな声で言う。




 「う………………そ、ですけど……………」



 「……ふふ。では、セオ様のタキシードにもわたくしの色を混ぜなければ。今ありますか?」




 「い、いえそんな……「いや、ですか?」……うう、レイ」




 セオドアは真っ赤な顔のまま執事のレイを呼ぶ。レイはとびきり優秀で意地が悪いから既にタキシードを持って立っていた。





 「こちらに」




 こういう時ばっかり仕事が早いやつ………!

 顔を赤くしながらレイを睨むセオドアを他所に、アミィールは両手にとても弱い土魔法と火魔法を宿して白いシンプルなタキシードの隅々まで触れていった。







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