主人公の男の性
アミィール様が、は、裸で!俺にキスしてる!
パニック状態のセオドア。耳まで真っ赤にしている。こんなのだめだ、離れなくては……………
とは思うものの、人間のお姿に戻ったアミィール様は積極的で、何度も何度も啄むようなキスをしてきた。…………じれったい。もっと、もっと深いものをしたい。
どぎまぎしていた気持ちが、不純な気持ちに変わっていって、一糸纏わぬアミィール様を抱きしめながら、自分から深いキスをした。
いやらしい音と、少し離れる度に出るアミィール様の甘い吐息に、理性が既に飛びそうだ。おまけにアミィール様は裸で…………………顔も胸も局部も物凄く、熱い。
「は………………」
これ以上はまずい、と思ったセオドアは名残惜しげに唇を離す。アミィール様は涙に濡れた顔で、少し不安げな顔をしていた。
「っは、セオ様____何故、わたくしだとすぐわかったのですか?」
「わかるさ……………私は、アミィを心の底から愛しているのだから」
「怖くは、なかったのですか?」
「怖くない、寧ろ美しすぎて…………見蕩れてしまったよ」
「………………美しくなど…………醜い姿を、貴方には見られたくなかったです」
そう言って目を伏せた。アミィール様は醜い、というけれど、本当に美しかったんだ。アミィール様の髪と同じ色の龍は、とても壮大で、美しくて、力強くて_____アミィール様でしかなかった。
今にも泣きそうな顔をしているアミィールの身体をセオドアは自分の上着を羽織らせてから優しく包み込んだ。アミィールがいつもしてくれるように、耳元で囁いた。
「貴方は、どんな姿をしても___貴方だ。
俺の好きな、強く、美しいアミィだよ」
「___ッ」
アミィールはセオドアの甘く低い言葉を耳元で聞いて、顔を赤らめる。
嗚呼、もう、本当に、この人には敵わない。
声だけで蕩けてしまいそう。どこが女の子みたいだ。………………この人はわたくしよりも全然、男らしい。
「____セオ様、驚かせて申し訳ございません。
けれどわたくし____嬉しくて、幸せです」
アミィールは裸だということも忘れて、身体を密着してぎゅう、と強く抱き締めた。
* * *
その夜、自室にて。
「_____レイ」
セオドアは局部を抑えながら、それはもう真っ赤な顔で自分の執事の名前を呼ぶ。
執事・レイは既に扉の前に居た。にやにやしながら返事をする。
「なんでしょうか?」
「部屋を出ていってくれ。1人になりたい。
_____朝まで絶対、絶対に、入ってくるな」
「なにをやるのですか?」
「そ、それはッ、ど、ドドド、ドレスを作るんだ!デザインを、か、考えて、もっと素敵なドレスを!作るから!」
慌てて言葉を紡ぐセオドア。説明しよう、セオドアはとてつもなく嘘をつくのが下手なのだ。目が泳ぎ言葉もぎこちなくなる故初めて出会った人でもわかるほどである。
そう誰に説明しているのかわからないレイは思考を止めてわざとらしく執事モードで聞く。
「…………………ティッシュは2箱あれば足りますか?それとも5箱ほど準備したらよろしいでしょうか?」
「ッ…………………5箱、頼む………」
そう小さく呟くセオドア。ほらな、やっぱりぽろりと本音を出してしまう。とはいえ、これは健全な男なら必ず通る道。寧ろ男なんだなと知れてよかったと思うことにしよう。
そう思春期の子供を持つ親の気持ちになりながら、レイはにこやかに口を開いた。
「わかりました。今急いで持ってくるのでおっぱじめないでくださいね?主人で友の貴方をお慕いしておりますが、流石にそのような光景は見たくありませんので」
「ッ!わ、わかってる!………って!俺はただドレスを考えるだけだからな!?そ、そんなことしないぞ!」
「おや?ではティッシュを全て持ってってもよろしいのでしょうか?」
「う……………………」
自分の言葉に、主人であるセオドアは更に真っ赤にして涙目になる。
本当にコイツ面白すぎないか?
面白いだろう、俺の竹馬の友だ。
レイはにやにやしながらティッシュを取りに部屋を出た。
※補足
中世にはティッシュがありませんでしたが、この作品はあくまで『中世風』なので、ティッシュがあります。