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Good-bye Memory .

 





 「ここが、………セオ様の部屋なのですね」



 部屋に連れてくると、アミィール様は目を輝かせてぐるりと部屋を見る。………なんだか、恥ずかしい。



 そりゃあ、一応公爵家だから広い方だと思う。けれど、サクリファイス大帝国での自分の部屋の方が数倍も広いし立派だ。



 自分の部屋は至ってシンプル。自分と同じ群青色と白、黒の家具。お気に入りではあるけれど、少し色気がないというか…………The!男の部屋!って感じで面白いものは何も無い。



 けれど、アミィール様は先程泣いていたのが嘘のようにはしゃいでいる。




 「あ!セオ様のことですから、この机で突っ伏して悩んだりしてましたでしょう?」



 「よ、よくわかったね、……そこで……」




 ____求婚イベントの時からずっと貴方のことを考えていた。




 「ベッドもフカフカですね、………セオ様の匂い、まだする」



 「そうかい?」



 ___そのベッドで毎晩、貴方の夢を見られるようにと願っていた。



 「……この部屋は、セオ様みたい。優しくて、控えめで……?」




 気づいたら、アミィール様を後ろから抱き締めていた。……ここは物心ついた頃からずっと過ごしてきた部屋。だけど、俺だけじゃない。アミィール様絡みの思い出もあるんだ。




 そう思うと、なんだか愛おしくて。

 でも少し寂しくて。


 不思議な気持ちで、アミィール様を求めてしまった。



 そんな俺の腕に、アミィール様の御手が乗った。そして、優しく、子守唄を歌うような声で言う。




 「……大丈夫です、セオ様。帰って来れる時に帰ってきましょう。わたくし、頑張って休みを取れるようにしますわ。


 帰ってきたい時に帰って来れる………ここは、貴方のお家なのですから」




 「………………ッ」





 涙が流れた。アミィール様は次期皇帝になられる御方。そんな暇など無いはずなのに、それでもこう言ってくれるんだ。



 そして。



 アミィール様は俺との約束を守ってくれると知っているから、信用出来るんだ。




 「アミィ……俺に、アミィが居てよかった。アミィじゃなかったら、此処を出ていこうと思わなかった。



 それくらい____この家が好きだ」



 「ええ。……わたくしも、セオ様は勿論、セオ様のお優しい家族も、この部屋も、………この家の雰囲気が好きです。



 今度はお披露目ではなく、遊びに来ましょうね」




 「ああ。……一緒に、来て、くれ」




 我儘な俺は、こう言ってしまった。

 けどアミィール様は首だけを動かして『喜んで』と微笑んでくれた。




 _____大好きな家との別れは寂しい。



 けれど。




 この人と一緒なら、きっと大丈夫。




 弱い俺は、強くそう信じた。





 * * *





 その頃、応接室にて。





 「ありがとう、セフィアくん。………気を使ってくれたのでしょう?」



 「……そんなことないです。けれど、聞きたいと思ったのも事実です」




 アルティアの言葉にセフィアは強い眼差しを向けながら答えた。アルティアはふ、と笑ってからセオドアの家族と改めて向かい合った。





 「____私とアミィール、"龍神の血"を持つ私達は、人間ではありません。けれど、殆ど人間と一緒です。


 違いは__龍になれることと、魔力が常人の1000倍あること、そして………"代償"や"呪い"を抱えていることです」





 アルティアの黄金色の瞳が、妖しく光った。


















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