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二重人格?

 





 「大きな声は出さないで、バレたら面倒だわ」




 「…………ッ」




 セオドアはこくこくと小刻みに頷く。

 それより!顔が近い!すごい近いんだが!?ドアップで見たアミィール様は本当、フランス人形……いや、もっと美しい……!



 「…………ごめんね、驚かせちゃった。おはよう」




 「お、おはようございます………ではなく、何故ここに………!?」




 普通、王族なら専用の馬車で登校する。ヴァリアース城に滞在していると聞いたことがある。ならやっぱり馬車での登校のはずなのに……………




 しかしアミィール様はサラッととんでもないことを言った。





 「抜け出してきちゃった。そんなに距離が無いのに馬車なんて仰々しいでしょう?」



 「な、それはなりません!従者がどれだけ心配すると…………」




 「書置きを残してきたから大丈夫よ。………セオドア様と登校、したかったんだもの」



 そう言ってむう、とむくれるアミィール様。

 いつもとキャラが違くないか…………?いつもは凛として、令嬢よりも丁寧な言葉を使うのに、今の話し方は町娘よりもフレンドリーだ。




 「?どうしたのですか?」



 「いや、その、………全然いつもと違う喋り方をなさっておられるので………」



 「それは………わたくしは、一応皇女ですし、このような馴れ馴れしい話し方はいけないでしょう?だから頑張って意識しないとこういう話し方になっちゃうの」




 アミィール様はそう言って、地面に落ちていた石を蹴る。石は遠くに転がっていく。それを見てからでも、といって俺を見た。




 「セオドア様とは、もっと親しくなりたいから。皇女、としてではなく、アミィールとして…………セオドア様と話したいなって」




 「……………ッ!」





 いつもの高貴な笑顔ではない、溌剌とした笑顔。ギュン、と胸が苦しくなる。ギャップ万歳………!




 「それより、行きましょ?遅刻してしまうわ」




 「あ、はい……………」




 アミィール様の隣を、歩く。ちら、と見たら昨日のように視線があった。慌てて目をそらす。けど、もう一度見て、また目が合って…………を繰り返す。




 本当に自分はヘタレだ…………!男として恥ずかしすぎる…………!




 けれど、いい雰囲気ではある。もしかしたら、俺を好きになった理由を聞けるかも……………




 「あ、あの」



 「ん?なあに?」




 「ッ!」




 アミィール様はすんなり顔を近づけてきた。一々距離が近い………!熱くなる頬を抑えつつ、早口で聞いてみた。




 「な、ななな、なんで私を、す、………ッ、求婚、……!」





 うわー!早口で言ってるのに、ちゃんと言えない!口が回らない!なんだこれ口ちゃんとついてるのか!?




 セオドアは自分の口を押さえながら顔を真っ赤にして俯いた。アミィールはそれをみて、クスクスと小さく笑ってから答えた。




 「____貴方が花の世話をしているのを見てたの」




 「へ?」




 「小さな花壇で花の世話、いつもしてるでしょ?あと、教室にある花瓶に水をあげてるのも見た」



 「……………?」



 アミィールは空を見上げながら、独り言のように言葉を紡ぐ。



 「あの小さな花壇の所の大きな木、わたくしの秘密の場所なのだけれど、そこで花を触ってる貴方を見たの。いつもニコニコ幸せそうな顔をしていて、…………いいな、って思ってたの」




 「……………………」




 確かに、花壇の所には幹の太い大木がある。よもやアミィール様が居るとは思ってなかったけど、……………でも。




 「……………それだけ、ですか?」




 「うん。…………沢山好きな所、あるけどきっかけはあれかな。そもそも、好きになる気持ちに理由って、いる?」




 「それは……………」




 ………………少女漫画のようだ。

 ヒーローがヒロインに言うような甘いセリフ。耳が溶けてしまいそうな甘い声。




 ……………ッ、きっとこれは主人公補正だ。

 アミィール様はその色香に惑わされてるんだ。





 そう思おうとしたけど、胸も、顔も熱くなった。


















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