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人智を超えた力 #とは

 



 「セオ様!」




 「…………アミィ」




 玉座の間に、アミィール様がいらっしゃった。息を切らしている。走ってきたのはすぐにわかった。



 俺は嬉しくて、抱き締めたい気持ちを抑えて言う。





 「……………俺、アミィと結婚するの、認められたよ」




 「ッ………………セオ様…………!」



 アミィールは泣きそうなセオドアを強く抱き締めた。

 


 嬉しい。



 凄く嬉しい。




 けど。




 そんな強大な力を持つ人間は、争いの種になりかねないんだ。人智を超えた力を得た者は、普通の人間ではなくなる。神にさえなれてしまう。




 そんなの_____辛い。



 わたくしが"龍神の血を受け継ぐ者"だから、わかるんだ。



 そのような力などなくても、わたくしはセオドア様の事を愛しているのに。何故そのような力をお与えになったのですか。




 神………………だから貴方は嫌い。




 神なんて大嫌い。




 _______心優しい彼をそんな辛い道に連れていく貴方が大嫌いです。





 「………………ッ」



 涙が溢れる。胸が苦しい。

 でも、セオドア様は本当に嬉しそうに笑っているんだ。



 それが______嬉しくて、悲しくて。たくさんの感情が渦巻いていて…………言葉が出ない。




 セオドアはアミィールを抱きしめながら、優しく言う。




 「……………アミィ、泣かないで。



 俺は____アミィと居れるだけでいい」





 そう言って、セオドア様は少し離れてわたくしにキスをした。………甘くて、酸っぱくて…………涙が止まらないくらい、悲しいんだ。





 父親が居る前でも、何度もキスをした。

 セオドア様のキス、いつものキス。………………お願いです。強力な力を持っても変わらないでくださいまし。






 そう切に願って、目を閉じた。










 * * *









 「~♪」





 俺は今、凄く幸せだ。

 鼻歌だって出てしまう。だって、皇帝様に結婚を認められたから。



 理由は_______




 セオドアは自分の指を見た。

 傷は残ってないけど、この血だ。



 とんでもないチート能力を持っていた。主人公なんてお飾りだと思っていたのに、だ。




 でも、そんなのどうでもいい。


 頼まれても、家族以外には使わない。頼る気もない。




 ちゃんと"家族"になれたかは……………わからない。本当は、好かれて認められたかった、なんて我儘なことを考えている。





 「……………偉く上機嫌だな、セオドア」




 「お、レイ」




 執事のレイは、暗い顔をしていた。

 何かあったのか……………?




 「どうしたんだ、レイ」



 「_____お前、その力がどういうものかわかっているのか?」




 「え?」




 レイは執事モードをすっかりやめて、詰め寄ってきた。大きな茶瞳が歪んでいる。



 「お前ッ、なんで嬉しそうなんだよ!」




 「ッ、だ、だって…………」



 レイは震えながら言う。




 「いいか、その力は、人智を超えた力だ……戦争の種にだってなる。お前、アミィール様の顔を見たのか?あんなに、あんなに悲しそうな顔をしてたんだぞッ!」





 「ッ!」




 レイは俺をソファに押し倒して胸倉を掴んだ。

 茶瞳に涙を浮かべて、そして大声でこう怒鳴った。



 「"龍神"で苦しんでいるアミィール様の前で!人智を超えた力で浮かれてるな!」



 「_____!」






 ふーふー、とレイが肩で息をしている。



 俺は__________馬鹿だ。



 頭に水をぶっかけられた気分だ。



 アルティア皇妃様は、"龍神の力に関すること"で苦しんでおられた。


 アミィール様は、自分が人外だと泣いておられた。




 ______俺は、俺は馬鹿だ!




 「ッ、…………レイ、ありがとう。頭が冷えた。俺、アミィール様に逢いに行く」




 セオドアは、今にも泣きそうな顔でそう言った。レイは背を向けながら大きく息を吸う。



 「ああ。行ってこい。行ってぶん殴られてこい!」



 「……………ああ!」





 セオドアは部屋を飛び出した。城内を走る。





 アミィール様……………!







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