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主人公チート能力『治癒の血』

 



 俺は、チート能力がない。

 それはゲームの設定上決まっていること。



 ……………なのに。




 俺は、自分の腕の血を見る。先程、ケーキを切ろうとしたら指先を切ってしまったのだ。結構深くて腕まで滴っている。それを心配してくれたアルティア皇妃様は駆け寄ってくれた。





 けれど、アルティア皇妃様の膝が急に折れて、胸を抑えて倒れたのだ。場が慌ただしくなって、皇帝に言われたとおり机をどかそうとしたらその血が落ちて……………アルティア皇妃の身体が光った。



 で、あっさり起き上がったのだ。




 そして。





 「……………ねえ、セオドアくん、ゲームノセッテイニハコンナノウリョクアルノ?」




 アルティア皇妃様は日本語で聞いてきた。俺は首を振る。そんな能力があるなんて、知らない。



 そう応えると、アルティア皇妃はふむ、と考えてから太腿から小さな剣を取り出し………手首を切った。



 「!」



 「アル!?」





 アルティア皇妃様の手首から血が流れる。しかもかなり深い。しかし、痛がる素振りも見せずに、俺に差し出してきた。




 「セオドアくん、ここに血を落としてみて?」



 「ッ…………え、………はい」




 俺は血が苦手だ。直視できない。でも、皇妃様の命令を逆らえない。恐る恐る手首に血の滴る腕を近づけ、1滴落とした。




 すると、再び緑の光を放って____傷が。





 「傷が……………なくなった………?」



 「……………うん。やっぱりそうだ」



 アルティア皇妃様はどこか納得したように頷いた。ラフェエル皇帝様が聞く。




 「………………どういうことだ?」




 「____この子、凄い力の持ち主よ。


 この子の血は、"癒しの力"が凝縮してる。それも、身体を治すなんて生温いものじゃない。強力な治癒魔力を含んでいる………………この様子なら、死人でも生き返るわ」





 「………………は?」





 何を言われているのかわからない。



 だって、俺はなんの特徴もない主人公なのに。



 そんな力____あるわけ、ない。




 「そんなの、嘘です、だって、私…………」



 言葉を紡ぐが、アルティア皇妃様はいつになく真剣な顔で首を振る。



 「……私は元龍神の後継者よ。人間じゃない、大きな力を持つ龍神。そんな私の傷が癒す………ううん、なくなったの。



 さっきだって、代償__膨大な魔力による発作が、弱まった。



 こんなの、人間が当たったら、死人は命さえも取り戻す」





 「____!」



 言葉を失う。

 いや、何を言えばいいのか分からないのだ。だって、そんな力、大きすぎる。平凡な俺にはあまりにも………




 呆然とするセオドアを他所に、ラフェエルは大声を上げた。




 「リーブ!今すぐにエリアス、クリスティド、ダーインスレイヴ、フラン、ガロに伝え、それを口外させるな!」




 「ハッ!」




 「アル、お前は休んでろ。しっかり休んでから妖精神達に聞いてみろ」



 「ううん。もう体も大丈夫だし、今すぐ聞くわ」




 「わかった。…………無理はするな。


 小僧!」



 「はい!」




 突然呼ばれて、大きな返事をする。怒られるか?と思ったが、予想外の反応だった。




 「アルを___妃を救ってくれて、感謝する」



 「ええ!?」



 ラフェエル皇帝が頭を下げたのだ。皇帝が!頭を!この凡人に!



 もう訳が分からない。何がどうなっているのかわからなくて頭が痛い。しかし、皇帝様は待ってくれない。




 「アルの言う通りならば………お前は、戦争の材料になりうる。



 そして、アルの"代償"を____アミィールに受け継がれている"代償"も、抑圧できる。



 今までの仕打ちはいくらでも頭を下げよう。



 だから_____アミィールと夫婦になってくれ」




 「……………!」




 初めて、お許しが出た。

 代償とか戦争とかわからない。自分の血の事もわからない。けど。



 なんでもよかった。


 アミィール様と結婚出来る、お許しを貰える。




 それだけで______俺は、嬉しかったんだ。




 セオドアは、跪く。

 胸に手を当てて、ラフェエルを見た。





 「_____改めまして、セオドア・ライド・オーファンです。



 謹んで、お受け致します」




 俺は、愛する人と共にいれるんだ。

 それがとても、嬉しかった。




 ____この時の俺は、やっぱり分かっていなかったんだ。


 この力を持つ意味を_____













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