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復活の代償

 







 「今日は、マドレーヌを準備してみました」




 セオドアはにこやかにそう言う。

 ラフェエルはそれを険しい顔で見ていた。



 ____この小僧は、ある日突然アルティアがお手伝いさせるんだ、と言って連れてくるようになった。大方、アルティアが何かを吹き込んだのだろう。



 もちろん仲良くしてやる気はない。




 ……………が。




 ラフェエルは机を見る。

 いい香りを立てるコーヒー、マドレーヌ、チョコモナカ、ガトーショコラ………それらは全て私が嫌いじゃないもので。



 剣術、武術、魔法は中の下、知識は中の中、礼儀作法は妥協して上。…………凡人である。



 だが、人を観察する、試行錯誤するのは得意なようだ。その能力というのは経験や素質で身につく。剣術などは毎日行っていれば身につくが、この力は本人の意識が伴わなければ身につかないものだ。故に、できる者は限られている。



 その点、この小僧はそれが突出して出来るのだ。実際、兵士や従者、諜報を行う者を選出する際、意見を聞いてみた。



 すると、私が使えると思った人間を『この人は忠実なお人柄です』と言う。人を選び、その利点を探せる貴重な人間だ。




 …………とはいえ、認めた訳では無い。


 なんとか婚約解消に持ち込みたいが、あのお転婆は無理に離すとアルティアのように家出をしたりするだろう。面倒な女である。しかし、この男も脅そうが何をしようが離れない。



 政略結婚という手も考えたが、サクリファイス大帝国には利点がない上、私の大切な娘に釣り合う男などいない。この世を全て統一した男でも嫌だ。





 どうすればいいのか____「アルティア皇妃様!」………!






 男の叫び声に思考が止まる。見ると___アルティアが倒れていた。私はすぐさま駆け寄って抱き上げる。






 「アル!」




 「は、は…………」




 アルティアは苦しそうに浅い呼吸をしている。身体も熱く、胸を抑えている。





 …………"代償"か………!




 代償____それは、"復活"の代償だった。アルティアは1度死んでいる。それを私が無理やり生き返らせた。結果、アルティアは生き返ったが……新しい身体は元々の体よりも、脆かった。膨大な魔力は脆い身体を蝕み、突発的に発作が起きる。ひどい時は3日も目覚めない。




 「ッ、リーブ!」



 「は、すぐに魔力抑制剤を準備致します」



 茶髪茶瞳の側近・リーブはすぐに準備に取り掛かる。

 ……ちっ、早くしなければ、アルティアが……!




 「小僧!このテーブルをどけろ!」




 「は、はい!」




 小僧は急いで動く。……その時、小僧の手首から滴っていた血が、アルティアの顔に落ちた。その瞬間、不思議な現象が起きた。




 「!?」



 アルティアの頬に落ちた血が___緑の光を放ったのだ。それはアルティアの身体を包み込み_____収まった頃には、アルティアの呼吸が落ち着いていた。




 「一体なにが………おい小僧!何をした!?」



 「え、えっと……………?」




 小僧も首を傾げている。

 今の光はなんなんだ………!?





 「…………んん?」





 「!アル!」






 アルティアが、目を覚ました。先程の苦しそうな顔ではなく、スッキリした顔になっている。




 「あれ……?代償の痛みが、ない………?」



 「アル!」



 「わ、ラフェー、苦しい」




 アルティアは顔を歪めているが、ラフェエルは離さなかった。


 よかった。大事にならなかった…………しかし。



 「……………小僧、お前、その血はどうした?」




 ラフェエルがそう聞くと、セオドアはビクビクと震えながら答える。



 「さっき、ナイフで切ってしまって………それを心配してくださったアルティア皇妃様が近づいてくれたのです、その時に…………」



 たどたどしく説明するセオドア。そんな中、アルティアが頬に着いていた血に触れた。



 「これ……魔力を吸ってる……ううん、それだけじゃない、傷を癒して"元通り"にする力………?」



 「…………何?」











※どうでもいい小話


"復活"の件も前作です。この時点ではさらっと触れるだけなので、気になった読者様は宜しければ前作を見てください。

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