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自分の目で見た皇帝様

 

 「ど、どうぞ」




 「ありがとう……………んっ、おいし!」




 アルティア皇妃は一口飲んでパァ、と顔を明るくする。ほ、と胸を撫で下ろした。お世辞でも嬉しいけれど、アミィール様に初めて飲んで頂いた時と同じ顔だから、味は問題ないのだろう。



 1人安堵するセオドアを他所に、アルティアはラフェエルを見た。




 「ラフェエル、飲んで飲んで、とっても美味しいの」




 「虫が入れた物など臭くて飲めん」




 「…………へえ~?わたくし、丹精込めて準備してくれたものを無下にする人と閨を共にできません」





 「!?」



 ね、閨って…………こ、この人さらりと何を言っているんだ!?俺がいるのにそんな、夫婦の夜の事情を話すものなのか!?………そ、それに、それくらいで皇帝が飲むとは……………




 「…………………………」





 ラフェエルは無言で紅茶を飲んだ。



 飲むんかーい!え、え、営みってそんなに大事なのか!?




 セオドアの怒涛のツッコミ、止まらず。

 しかしそんなこと露も知らない皇帝夫婦は会話している。



 「ね?美味しいでしょ?」



 「…………………」



 「ふふ、ラフェーって、いつも美味しいって素直に言わないわよね。変わらないなあ」



 「…………………五月蝿い」



 「このケーキも美味しい。セオドアくんが作ったんでしょう?」



 「は、はい。シンプルなショートケーキですけど………」




 「シンプルなのにこんなに美味しいんだから凄いわ。ね、ラフェーも食べて」




 アルティアはそう言って目の前のケーキをフォークで掬ってラフェエルの口元に持っていく。頑なに口を開かないラフェエル。アルティアはぼそ、と小さな声で言った。




 「…………閨」




 「…………………」





 とても嫌そうな顔をして口を開く………って、開くんかーい!




 2回目のツッコミをするセオドアでした。






 * * *







 「ああ……………………」






 セオドアは自室の机に顔を突っ伏していた。ジメジメとしていて、キノコでも生えそうな勢いのセオドアに、執事のレイが問う。




 「次はどうしたんだ?」




 「………………皇帝夫婦ッ…………とっても仲睦まじい………!」



 悶絶しながらセオドアはそう言う。




 ____アルティア皇妃様のお手伝いになって、1週間。ずっと見ていたけれど、それはもう甘い甘いとてつもなく甘い空間しか無かった。見てるだけでトロトロと蕩けそうになる。推しのカップルを見てる気分だ。題してツン甘!



 アルティア皇妃様が悪戯をすると黒い雷が落ちる!失言をすれば黒い雷が落ちる!純粋に好き、と言うと黒い雷が落ちる!



 黒い雷の原理はわからない。ただ、雷を落とす時にラフェエル皇帝様の右目に複雑な魔法陣に似た紋様が出る。



 こう聞けば仲が悪いと思うだろう?けれど違うのだ。ラフェエル皇帝様はアルティア皇妃様をいつも見てるし、ふとした時に触れたり、キスをしたり、閨、という言葉を出すとすんなり言うことを聞く!



 勿論仕事もしているのだが、いちいちハートが飛ぶ勢いのイチャつきなのだ。詰まるところおしどり夫婦!素敵すぎて、溺愛漫画を見ている気分だった。




 「……………というわけなんだ」




 「……………熱烈に語りすぎだろ、鼻血出てるぞ」



 「あ」




 心に溜め込んだ全てを吐き出すと、若干引き気味のレイがテッシュを差し出してきた。それを受け取って、鼻を抑える。





 …………最初こそラフェエル皇帝様を怖いと思っていたけれど、それは勝手な先入観だった。ラフェエル皇帝様はアルティア皇妃様以外に特別冷たく当たりもしないし、アルティア皇妃様以外に特別甘くもしない。


 尚且つ、さり気なくアミィール様の執務を減らし、自分で負担していたり………なんというか、ツンデレではあるものの、とっても家族への愛が深い人だったのだ。


 勿論アルティア皇妃様とイチャイチャしているだけでなく、アミィール様の事を気にかけているだけではなく。自分の仕事も丁寧かつスピーディに行っていた。アミィール様も凄く仕事の早い人だけど、ラフェエル皇帝様はそれを上回る程だ。


 アミィール様が纏めた書類に目を通しながら別の仕事の書簡を記し、諜報員などの報告を10人纏めて聞いて、それぞれ指示を的確に出す。聖徳太子もびっくりだ。




 つまり、自分の目で見たラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス皇帝様は噂に聞いてた以上に優秀で、国やユートピアの為なら労力を惜しまず、それでいて家族を、国を人一倍想う人だった。


 だから、見ていてとても心地いいし、認められたい気持ちは強くなった。



 家族になりたい。アミィール様の親、としてだけではなく、本当の家族になって、お話をしてみたい。そう思わせる人だったのだ。














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