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決意の口付け

 



 「……………落ち着いたか、アミィ」



 「ぐすっ………申し訳ござ………ッ」




 1時間ほど2人で泣いて、やっと落ち着いた。けれどアミィール様は未だに涙を流しておられる。………俺のことをここまで心配してくれているのがわかって、泣いているアミィール様には悪いけど、凄く幸せだった。




 アミィール様は嗚咽をしながら顔を上げた。黄金色の瞳が未だに涙を称えている。



 「もう、あのようなことはなさらないで…………ッ、わたくし、心臓がいくらあっても足りません…………」





 「それは…………約束できないよ。だって、私はアミィと出会えたことを否定したくない。アミィが私の全てだもの」




 セオドアはそう言ってアミィールの涙を舐める。とてもしょっぱいけれど、どこか甘い、不思議な味。

 


 アミィールはそれを受けてから、セオドアの首筋にある傷を舐めた。




 「んっ、………」

 



 セオドアはぴくり、と体を捩った。

 アミィールはそれでも辞めず、傷に舌を這わせる。




 セオドア様の血、甘い。優しい言葉に嬉しい気持ちはある。けれど、わたくしだって譲れない。




 アミィールは首筋から顔を離し、セオドアの頬を両手で包んだ。


 セオドアの緑の瞳が涙に濡れて、目尻が赤い。鼻水も出ている。………愛おしい御方のお顔はいつだって輝いて見える。



 「わたくしは、……セオ様に傷ついて欲しくないのです。セオ様をお守りしたい。セオ様は……生きることだけを考えてください」



 「それは私だって一緒さ。………アミィが傷ついている姿は見たくない。泣いている姿を見たくない。……貴方をお守りしたい。


 全部貴方を愛しているから。



 ___貴方への愛を否定したくないんだ」



 そう言って、セオドアもアミィールの頬を持つ。



 2人はどちらとも言わず唇を重ねた。涙や鼻水でぐちゃぐちゃなのに、それでも唇を何度も交わし、ベッドに倒れ込む。押し倒された反動でアミィールの瞳から涙が流れる。




 ………………この人は、なんでも1人で背負い込もうとするんだ。こんなに小さな身体で、それでも俺を守ろうとする。



 ___でも、俺だってこの人を守りたいんだ。



 「ん、ふぅ、っ…………」



 何度も求め合う。何度交したって飽きない。いつだって甘くて、………今は少ししょっぱいけれど、それも美味しくて。




 _____俺は、この人を守る為に、この人を泣かせない為に、強くならなければならない。



 それだけじゃない。




 俺とは違う愛で、この人を想っている皇帝___お父様にも認められなければならない。



 この人を守る為に、俺はなんだってしたい。





 乙女男子だって、男なんだ。



 そう改めて気を引き締めつつ、決意を伝えるように何度もアミィールの唇を重ねた。


 アミィールは悲しそうにしながらも、それに応えるように唇を、唾液さえも受け止めた。





 * * *


 その頃、玉座の間。




 「……………………クソ」




 サクリファイス大帝国皇帝・ラフェエルは毒づいていた。



 生意気な小僧だ。

 私の剣を手で掴むだけでなく、私にこのような思いを抱かせるなど、虫けらには許されない行為である。



 アミィールもアミィールだ。

 小さい頃こそ可愛かった。いつだって私の傍に置けたし、周りも何も言わなかった。



 大きくなって、それを周りが許さなくなって、アミィール自身も反抗し始めて。




 そして、男を見つけてきた。




 _____不愉快だ。






 ぎり、と歯ぎしりをしていたのを皇妃・アルティアは呆れながら見ていた。



 本当に親ばかなんだから……父親というのは何故こう娘が大好きな人種なのか……



 そんなことを思いながら、今は亡き父親に想いを馳せた。


















※どうでもいい小話


皇妃の父親も前作に出ます。主要キャラなのでよろしければご覧下さい。

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