表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/470

立場逆転劇

 




 ザッシュは近くにいたマフィンやヘイリーを突き飛ばしてから前に出て、憤るように言う。




 「アミィール様!その男は沢山の女性を不幸にする不貞な輩です!貴方が近づくべき者ではありません!


 一国の皇女が下賎な輩を相手にする必要など無いのです!

 そもそも!その男よりも私の方が優れているのはご存知でしょう!?そんな男を放って私の元へ来てください!貴方を幸せにできるのは私だと何度も申し上げたはずです!」




 「…………わたくしは、公爵家であるセオドア様に伯爵家の貴方がそのような事を述べている事の方が不愉快ですわ。



 女性を平然と突き飛ばし、何を仰っているのですか?………わたくしに言い寄る前に、するべき事をまず考えてください」




 「___ッ」





 ザッシュは口を噤む。…………いくらザッシュに貶されている身とはいえ、自分が原因で国交問題が生じるのは嫌だ。



 そう思ったセオドアは深く頭を下げた。




 「申し訳ございません、このような事に手を煩わせてしまい…………私の頭一つで事は収まらないのは承知しておりますが……………」




 「セオドア様、頭をお上げください。貴方こそよく堪え、その上で自分を貶めた者を庇う事まで気を配ることができましたね。



 やはり、貴方が不貞の者には思えません。そう思いませんか?マフィン様?」





 「ッ…………………ですが、その者はわたくしの婚約者です!」




 「よくもまあ、あのような暴言を撒き散らした上で言えますわね。どの口が仰っているのでしょう、教科書でも召し上がってみますか?」




 「なっ____」





 マフィンはあんぐりと口を開け呆然としている。これには俺も驚いた。まさか誰にでも優しいアミィール様からこのような言葉が出るとは思わなかったのだ。



 アミィールはマフィンから目を離し、セオドアを見る。




 「このような時に求婚などはしたないことをしてしまい、申し訳ございません。


 困らせてしまいましたか?」




 「そ、そのようなことは………………」




 「よかった、宜しければ考えて頂けないでしょうか…………?」





 そう言って俺を見上げるアミィール様。もう目が合わせられない。俺、主人公だよな?主人公補正がモブだけど皇女様にも効くのか?




 「アミィール様!今一度お考え___「くどいわよ」___ッ」




 未だに食い下がろうとするザッシュ、アミィール様のひと睨みでKOされる。いくら女誑しでも、皇女様の御心は動かせないようだ。



 その皇女様は俺を見てふ、と笑みを零して言う。




 「求婚の件はゆっくり考えてみてください。わたくしもお慕いしている殿方に無理強いはしたくありません。




 ……………そろそろ授業が始まります。ここは空気が悪いので、少し後ろの方に座りましょう」




 「は、はい!」





 呆然とするクラスメイトを放って、スタスタと後ろの方の席_アミィール様がよく座っていらっしゃる場所_に連れていかれた。




 隣に座ったら、凄くいい匂いが鼻腔を掠める。それだけでもう心臓がバクバクだ。授業なんて聞いていられない…………!




 ちら、とアミィール様を見たら、アミィール様と目が合った。すると、にこ、と笑った。ゴハッ!この破壊力はなんだ…………!?






 ドキドキしているうちに、教師が教室に来て、授業が始まった。ヒソヒソが未だに聞こえるけどどうでもいい。



 案の定、授業に集中できず、真っ白なノートだけが手元に残った。







 * * *






 「………………………はあ」





 その日の夜、セオドアは自身の部屋にあるお気に入りの勉強机に突っ伏していた。



 …………………結局、今日1日全く授業に集中できなかった。何故なら1日中俺の隣にアミィール様が座っていたから。勉強なんて身に入らなかった。





 アミィール様は、1年前に留学と称して転校してきた。それだけで驚いた覚えがある。あんなに美しく、設定を盛りに盛ったようなキャラなのに………モブなのだ。ゲームには全く出てこなかった。2年で転校してくるのはヤンデレ属性のターニャだけのはずである。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ