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貴方は狡い人

 






 「わかったわよ、私も公務に戻りましょう。…………あ、セオドアくん、またお話しましょうね。




 ニホンノコトトカキキタイワ」



 「………………!」








 アルティア皇妃は、日本語でそう言って颯爽と去っていった。日本のことを知っていて、日本語を使うって…………確実に……………





 「…………………セオ様」




 「?___うわっ」




 アミィールはセオドアの言葉を聞く前にお姫様抱っこをした。それを受けたセオドアはパニックに陥る。


 え、ちょ、ええええ!?俺、男!貴方、女!そして!皇女!




 「お、下ろしてくださ「喋ったらこの場でキスします」………ッ」




 そうにこやかに言われ、道行く従者達に不思議そうな顔をされながら部屋に連行された。勿論その時のセオドアは顔が真っ赤でした。







 * * *






 「………………………………」





 「……………………………」






 俺の部屋に戻ってきた。しかし、沈黙が流れている。そして俺は未だにアミィール様の膝にいる。…………いやいやいや、普通逆だよな?女が男の膝に乗ってるのならまだわかる。そこからの甘い展開は大好物だ。




 だがしかし。逆を考えてみよう。




 美しい皇女様の膝に男が、皇女様より大きく重い男が姫抱きをされている。それはとてもシュールな絵である。




 こうやって冷静に状況を客観的に見てると思うかい?もう賢者モードなんだよ。心臓のキャパがオーバーしているんだよ。今必死に"前世の母親の裸"を思い出しているよ。よくいるアフロ頭のおばちゃんの裸を思い出しているんだ。



 じゃないと!ドキドキして失神しそうだから!

 ほんと勘弁して欲しい。この状況も恥ずかしいけれど、アミィール様の甘い匂いがするんだ、そして不機嫌な顔はいつもの愛らしいお顔ではなく厳しい顔。男装もしてるから下から見上げれば男にもみえなくない。それはもう美男子な。乙女思考に悪い。




 そして、身体は男なわけだから目を逸らせば豊満な胸が目に入る。細い足も触れていれば柔らかくて、気を抜くと息子が起き上がってくるだろう。………つまり何が言いたいかと言うと、乙女的にも男的にもこの状況はご褒美であり拷問でもあるのだ。






 「……………………セオ様」




 「は、はい!」




 突然呼ばれて声が裏返る。しかし、そんなことは気にしないと言わんばかりにアミィール様は俺を見ずに続ける。





 「……………お母様と何をお話されていたんですか。あんなに近づいて」




 「そ、それは………………」




『日本人?』という話をしていたとは言いづらい。前世で日本人で、恐らくアルティア皇妃も日本人だった……なんて、信じてもらえると思えなかった。


 


 心苦しいけれど、それは隠させてもらおう………





 「アミィール様が私の植えた花を見てどんな顔をするか、想像してたら、アルティア皇妃と会って………アミィール様なら、喜んでくださるというお言葉を……貰いました」





 「………………………」





 そう言うと、少しお顔が緩んだ。……お?これは効いているのか?



 「………アミィール様に、ヴァリアースから持ってきたカーネーションを見て欲しくて、待ちきれなくて………そしたら、アルティア皇妃が咲かせてくださったのです」




 「……わたくしの、ために………本当、ですか?」





 黄金色の瞳が、やっと俺を捉えた。いつ見てもキラキラと輝いている瞳は見ていて飽きない。宝石のようだ。その宝石に自分の顔が映るのが………とても、嬉しい。



 セオドアは顔を綻ばせて、頷いた。




 「はい。……アミィール様の執務が落ち着いた後、共に見てくださいませんか?」




 「~ッ!セオ様は本当に……狡いです……怒れないじゃ、ないですか……」




 「それは、お互い様です。……アミィール様のそのお顔のせいで、私もつい触れたくなってしまいます……恥ずかしくてできませんが」





 そう言って顔を赤くしながら誤魔化すように笑うセオドア。アミィールはきゅう、と胸を締め付けられる。




 わたくしの愛おしい御方はどこまでも可愛すぎる………でも。





 「_____わたくし、セオ様の男らしいお顔も見たいのです」




 「え?……………っん」





 アミィールはセオドアが言い終わる前にキスをする。出来る限り身体を密着させて、自分が女だと強調するように抱き締めた。









※補足


日本語はカタカナです。あまり使いませんが、認知をお願い致します。

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