断罪イベントからの……?
「黙って見てろ、ですって?それは無理な相談ですわ。わたくしも今はこのクラスの一員、1人がこのような"冤罪"で裁かれるのは心苦しいですもの。
そう思いません?ザッシュ様?」
「………………!え、冤罪など…………」
あからさまに動揺するザッシュに、アミィール様はくす、と笑った。
「……………わたくしが見る限り、彼がそのような不貞な事をする御方に見えませんの。それとも、わたくしの目が節穴、とでも思いますか?
皆様、どうですか?」
アミィール様の言葉に全員が滝のように汗を流している。当然だ、彼女を怒らせることは即ち外交にも影響を及ぼす。サクリファイス大帝国はそれだけの力を有している国なのだ。
アミィール様は黙ってしまったクラス一同を睨みつけてから、くるりと俺の方を向いた。
「…………貴方は何もしていないのでしょう?でしたら、膝をつくものではありませんよ。
お立ちくださいまし」
「は、はい」
俺は急いで立ち上がった。周りの人間がアミィール様を怖がるように、俺だって怖いのだ。とても美しく、いつも憧れの的になる皇女に声をかけられて、動揺しない男などこの世にはいないだろう。
俺が立ち上がると、そ、と手を握られた。
「…………震えていますね、申し訳ございません。わたくしが早くこうしていれば貴方が傷つくことなどなかったのに…………」
「い、いえ、そんな……………」
言葉が詰まる。悔しそうな顔まで美しい。なんでこのキャラがモブなのか検討もつかない……あ。
手の震えが止まっていることに気づく。冷や汗をかいたせいで寒ささえ覚えている。…………もっとも、目の前にこのような美女が居るからなのかもしれないが。
そんな俺の思考など知らないアミィール様はふい、とマフィンを見た。
「マフィン様、本当にセオドア様と婚約を解消なさるのですよね?」
「も、もちろんです、………いくらアミィール様の目が正しかったとしても、火のないところに煙はたちませんわ!」
「そうですか。………………セオドア様も、それに納得していらっしゃる?」
アミィール様の言葉に、俺は頷いた。
いくら両親が決めた婚約だとしても、このような騒ぎが起きては婚約云々言ってられないだろう。自分を信用してくれず、あまつさえ家族ごと処そうとした女性を好きになることは到底出来そうもない。
そんな俺の頷きを見て、アミィール様はふわり、笑った。 そして俺の手を離さずその場に膝をつく。
「でしたら、セオドア様。
_____わたくしの配偶者になっていただけませんか?」
「______!」
アミィール様はそう言って、俺の手の甲に唇を落とした。
* * *
それで_____今に至るわけなのだが。
……………………はい?
頭が完全にショートした。
なんだこの少女漫画みたいな展開。
というか、少女漫画だとしたら逆じゃないか?王子がお姫様にやる奴じゃないか?
沢山の疑問がある中、それを考える余裕はまるでない。
い、イケメン系女子ーーーー!!
こんなに流れるように男に求婚する風習はこの国にないーーー!サクリファイス大帝国ではこんな求婚する風習があるのか!?
というか、この流れで求婚ってなんだ!?
完全に混乱する俺を見て、アミィール様は満足気に笑う。
「ふ、巫山戯るな!」
「!」
そんな中、声を荒らげたのは____ザッシュだった。