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幸せな家族の枷 #2

 








『呪い』___龍神を縛る枷。

 話によると普通に息をしているだけでも辛いと言う。それを『普通』だと思い、生活をし、そして『代償』により脆くなってしまっている身体を蝕んでいる。




 しかし。




 それは_____今日、終わるのだ。



 セオドアは薄く笑みを浮かべる。

 それを見ていた子供達は首を傾げた。



 「おとうさま、なんで笑っているのですか?」



 「父ちゃん気持ち悪~」



 「な、………なんでもないよ」



 セオドアはそう言って急いでいつもの笑顔で取り繕う。………待っていてくれ、セラフィール、アドラオテル、………アミィール。



 俺は今日_____君達の『呪い』を解いてみせるから。



 セオドアはそう考えながら、焼いていたパンケーキをひっくり返した。

 ひっくり返したパンケーキは真っ黒で、子供達に『失敗したー!』と騒がれ、泣いた女々しいセオドアでした。






 * * *






 「_____おやすみ」




 満月の夜、月明かりを浴びたセオドアがそれだけ言ってベッドを降りた。いつものように上着を羽織り、静かに部屋を出ていった。



 部屋に残った3人は____何事も無かったかのようにむくり、と身体を起こす。アドラオテルが先に口を開いた。



 「ほらな!父ちゃんやっぱりどこか行ってるんだ!」



 「そんなっ………トイレじゃないの?」



 セラフィールは涙目になりながらアドラオテルに言う。アドラオテルの顔は怒りに満ちていた。



 「トイレはこの部屋にもあるだろ!うわきしているんだ!……サイテーな父ちゃんだッ!」



 ぷりぷりと怒るアドラオテルと泣いているセラフィールの頭に、アミィールの細い手が乗る。




 「そんなこと…………ありませんわ」



 アミィールはにこ、と笑みを浮かべるが___心中穏やかではなかった。

 セオドア様がおかしい。それは、あの日過労で倒れた時から心配していた。ただ事じゃないと思っていたのだ。だから生活を見ていた。確かに忙しく、慌ただしく過ごしていたけれど、別段おかしなことは無かった。思い過ごしか、と安堵していたのだが。



 アドラオテルが『父ちゃんが夜いない』と言い始めたのだ。詳しく問い正したら『なんかそこから思い出せないんだ』と涙目で言っていたのだ。



 だから、最近はセオドア様が寝るまで起きていた。寝たふりをしていた。



 …………セオドア様はわたくしを愛してくれている。子供達を愛してくれている。不貞な行為ができる人ではない。



 分かっている、分かっているのに___胸がこんなに痛いのだ。わたくしは最低です。夫を信じられないなど妻失格です。見限られても仕方ないと思います。



 でも。



 あの御方の全てを知りたい。そう思うのは、いけないことなのでしょうか?




 アミィールはそこまで考えて首を振り、言った。



 「セラ、アド、貴方たちは寝ていなさい。


 わたくしが見てきます」



 「「やだ!」」




 子供達は声を揃えて首を振った。



 「わたくしはおとうさまの子供です!知る権利があります!」



 「俺はッ、…………俺だってオネーサンと遊びたいのに1人だけ楽しい思いをしているのは許せないから行ってやるだけだっ!」



 「………………」




 アミィールは考える。

 子供達も、わたくしと同じようにセオドア様を愛している。知ってしまった以上、放っておくことなどできません。



 子供達も、同じ気持ちなのであれば___わたくしは子供たちを止めることなど、できないのではないか?



 その考えに至ったアミィールはふ、と笑みを零して、2人の頭を撫でた。




 「____わかりました。


 共に、行きましょう」



 「はい!」


 「うんっ!」






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