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定められた運命は覆せる

 







 俺は、暗闇の中に居た。

 暗闇の中で、ただ1人だけ。

 寒くて、苦しい。



 俺はここで何をしている?



 _____龍神を殺せ!




 なんの声だ……?



 _____ゼグス様を奪わないで!



 ゼグス?………星の妖精神のか?




 _____私達の命を捧げるのです。



 どこかで聞いた話だな。



 _____そして、憎き龍神に『呪い』を。



 嗚呼、そうか。

 この声は……………あの人柱の人達の声だ。

 原理も理屈もわからない。



 いや、実際死者に嫌われるようなことをしている。

 己の望みのために、呪いを解こうとしているんだ。




 …………己の望み?


 望みとは、なんだ?



 俺はギャルゲーの主人公で。

 攻略対象キャラと結婚して。

 それはどんなに嫌だと言っても変わらなくて。

 それが定められた運命で。


 俺はそれを受け入れることしか____



 そう思った時。

 淡い記憶が蘇る。俺は下を向いていて、視線の先には紅銀の髪の、黄金の瞳の美しい人がいて。



 ____わたくしの配偶者になっていただけませんか?



 …………!



 ぶわ、と緑の光が舞った。



 ____セオドア様のこともっと知りたい。



 ____セオドア様のやっていることをわたくしもやってみたい。



 ____わたくしは貴方が好きです。



 _____セオドア様!


 ____セオ様。



 ____セオ。



 沢山の、沢山の心地よい声と様々な美しい御顔。

 俺は自然とそれに魅入っていた。

 美しい少女が笑ったり、泣いたり、目を細めたり、伏せたり、怒ったり。


 見ていて飽きることはない。

 それどころかもっともっととそれを求めた。



 _____パパ!



 ____父ちゃん!




 紅銀の髪、黄金と緑の瞳の女の子が花のように笑顔を零している。



 自分と同じ群青の髪、紅と黄金の瞳の男の子が口を尖らせている。




 ____嗚呼、そうだ。

 俺は定められた運命を、捨てた。

 愛おしいあの御方の手を取ったんだ。

 そして俺は色んな人に出会い、幸せになって。



 それだけじゃなくて、生まれた子供達が更に俺に幸せをくれて。



 定められた運命なんかよりも、幸せだと断言出来る。



 だからこそ。



 それをくれたあの御方と、子供達の定められた運命を変えたくて___抗っているんだ。



 その答えを見つけた時、一筋の光が暗闇に差した。



 俺はその光に手を伸ばした_____。






 * * *




 「………………ん」




 「セオ様!」



 「パパ!」



 「父ちゃん!」




 目を覚ますと____愛おしい家族が、俺を見下ろしていた。何があったんだ……?



 「アミィ、セラ、アド、…………どうした?」



 「ッ、セオ様…………ッ!」



 「わっ!」



 アミィールがせっかく起き上がった俺を押し倒すように抱き締めてきた。アミィールには似合わない、強い力の抱擁。この細い腕にどれだけの力があるんだ?



 「パパ!」


 「父ぢゃん!」



 「うわわっ」



 顔面には鼻水と涙のダブルパンチ×2である。アドラオテルまでこんなに取り乱して泣いていて、正直戸惑った。



 「えっと、………アミィ、私は、一体どうしたんだ………?」



 「覚えて、らっしゃらないのですか…………?過労で、熱を出して………」



 「え」



 そう言われて、考える。

 確かに体はダルい、寒い、の割には顔が熱く頭が重い。アミィールと子供達に抱き締められているとはいえ、体調不良だ。



 俺、予防はしっかりしていたんだけどな………いや、夜更けまでワールドエンドまで居たし、血を流していたし、普通に執務も育児もしていたし………知らないうちに過労が溜まっていてもおかしくない、か。



 そう思い至った所で、愛おしい重みを一つ一つ抱いて、もう一度起き上がった。





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