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主人公 の様子がおかしい!▽

 



 「あら、おかえり」



 「____ただいま帰りました」



 寝室に戻ってくると、部屋が灰色に染まっていた。これはアルティア皇妃様の時間を止める魔法である。



 アルティア皇妃様は『最強生物』と呼ばれる魔法の使い手だ。魔法とは少し違うらしいけれど、こんな風に『時間』を止めることができるのなら、魔法でいいと思っている。



 そう思っている俺の手首に触れた。

 アミィール以外に触れられるのは嫌だけれど、この人は無闇に触れている訳では無い。



 「____治癒魔法」



 「………………」




 アルティア皇妃様がそう言うと、俺の手首が淡い緑色に染まっていく。治癒魔法だ。俺のチート能力『治癒血』は、自分の傷は治せない。だからといって俺の身体に傷なんてあったら………アミィールは悲しむだろう。それだけ愛されているんだ、俺は。



 けど、寂しい気もする。何もしていない、と振る舞わなければならなくて、『呪いを解くために戦った勲章』が残らないんだ。アミィール達の知らない間に、呪いは解けている、という状況を作ると決めたのに、浅はかな俺は『俺が解放したんだ!』と堂々としたいと思っているんだ。




 …………俺は、格好悪いな。




 「よし、こんなものかな………って、顔暗いわよ、セオくん」



 「ッ」



 アルティアは凹んでいるセオドアの頬をむに、と引っ張る。『あら面白い』とむにむにしながら言う。



 「あらあらあらあら、一丁前に凹んでるの?子供のくせに?あーら、セオくんは男の子の顔もできるのね~顔はこんなに女の子なのにね~!」



 「や、やへてくはさい!」



 「あんた、まだ23歳でしょ、世界の終わりみたいな顔して凹まないで頂戴。


 やると決めたのでしょう?なら、誇りなさいよ、馬鹿ガキ」




 アルティア皇妃様はぶっきらぼうにそう言った。………この人は滅茶苦茶だけど、人の気持ちをわかってくれる、人なんだ。じわ、と涙が滲むと『次は泣くの?忙しないわね』と囀るように笑った。



 「まあ、いいわ、それより早く布団に入りなさい」



 「…………はい」



 セオドアは言われたとおり、灰色の寝室で上着を脱ぎ、アドラオテルの隣に潜り込む。それを見送ってから、アルティアはパチン、と指を鳴らした。



 寝室に色が戻っていく。それを見ながら___既に朧気な意識を、手放した。





 * * *






 「……………ん」





 紅銀の長髪、黄金の瞳を持つサクリファイス大帝国皇女、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスは朝の日差しに目を覚ます。



 彼女はヴァリアース大国に留学した際、現在の夫を見初め、熱烈にアプローチをして婚約、結婚を果たし子供を産み落とした23歳の美女である。



 ……………また、日差しが入っている。

 アミィールは目を擦りながら思う。自分は5歳の頃から4時に起き、鍛錬をしてきた。だから、体内時計通りに行けばちゃんと4時に起きるはずなのだ。なのに、最近いつも4時を超えて起きる。まるで、時間が狂っているように…………出産を経て、わたくしの体内時計は壊れてしまったのかしら。



 とはいえ、わたくしは『任務』をもうしていない。これからも、有事の際以外はしないと決めている。鍛錬を辞めることはないけれど、気が狂ったように剣を振るわずとも、空き時間にすればよい。



 そんなことを思いながら、隣を見る。

 隣には可愛い寝顔を見せている娘、その隣には娘と手を繋いでいる息子、そして____?


 「は、は……………」



 違和感。

 愛する夫の呼吸音が、おかしいのだ。

 アミィールは額に手を添える。



 「____あつ、い…………!」




 火が出るくらい熱いのだ、そして苦しそうに顔をゆがめている。アミィールはすぐさま立ち上がり、夫を抱き上げて寝室と繋がっている夫の部屋に行きベッドに寝かし直した。そして、叫ぶ。



 「レイヴッ!」




 そう叫ぶと、ぱ、と青紫色の髪の黒瞳、コート状の着物を着た男が現れた。レイヴ___ダーインスレイヴ、というのはこのサクリファイス大帝国皇族専用の魔剣で幽霊だ。



 ダーインスレイヴは欠伸をしながら言う。



 「ふぁあ、なんだよ、まだ朝っぱらじゃねえか」



 「はやく、はやく医者を呼びなさい!」



 「なんでだ___って、セオドア!顔赤くないか!?」



 「わかっているなら早く呼んでッ!わたくしを苛立たせないでッ!」



 アミィールは理不尽に怒る。普段の淑やかさなどすっかり忘れて、感情のままに怒鳴った。その姿は鬼のようで、ダーインスレイヴは少し後ずさってからふ、と消えた。








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