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10000本の『呪い』

 




 「わ………………ッ!」





 紙の中に入ると、俺は空中を落ちていた。フライの魔法を唱える前に、ラフェエル皇帝様が俺をキャッチしてくれた。




 「ッ…………すみませ____!」




 セオドアはそういう前に、言葉を失う。

 たくさんの、たくさんの人柱が並んでいた。柱に埋まった人間が生々しくて、吐き気を催す。けど、吐いてはいけない。



 これが____現実なんだ。




 催したものを飲み込んでいるうちに、ラフェエル皇帝が下ろした。そして、言う。



 「ここが___元サクリファイス大帝国で、"幻の島"・ワールドエンドだ」



 「…………ッ、はい」



 目のやり場に困る。どこを見ても生々しい人柱が乱立しているんだ。直視なんて、出来ない。



『来たな、ラフェエル』


『…………噂の人間も一緒か』




 「…………?」




 不意に、声がした。

 見ると___逆立った黒髪、糸目のチャイナ服の男と、スキンヘッド、サングラスにスーツ姿の男が居た。誰だ、と聞く前に、ラフェエル皇帝様がその2人の名前を呼んだ。



 「死神、闇の精霊…………久しいな」



 「……!死神様、闇の精霊様!お初にお目にかかります!」



 セオドアはそれを聞くなり膝をつき、最上の礼を尽くした。頭を下げるセオドアに『堅苦しいのは嫌いだ』と冷たく言い放った。




『俺様はハデス。こっちはケルベロスだ』



 「あ、えっと………」



 死神、と言うからもっと怖い神だと思っていたが………そうでは無いらしい。軽やかな人で、それはそれで戸惑った。



 ケルベロスはセオドアを捉えるとぽつり、言う。



『…………不思議な魂だ』



『それもどうでもいいんだよ、ケルベロス。


 口より____効果で示してみせよ』



 「ッ!?」



 「セオ!」



 ハデスがそう言うとビッ、とセオドアの手首に切り傷が入った。血が流れる。ラフェエルはきっ、とハデスを睨んだ。



 「何をする、ハデス」



『汚れ仕事を請け負っただけさ。血を使うのだろう?ならば、傷つかねばなるまい。


 それより、早く試せ』




 「…………はい」




 セオドアは痛む腕を自分の手で支えて、一番近くにあった人柱に血を落とす。


 すると。




 「____!」




 人柱が、光った。黒い光を纏って、サラサラ、と粉のように柱が無くなっていく。これは………成功なのか?




『………うん、成功だ』



 「ッ!」



 ハデスが一気に距離を詰めてきて、俺の肩に触れた。まじまじと血を見ながら続ける。



『驚くことは無い。心を読んだだけだ。


 で、成功さ。呪いは___否、呪いの為に命を捧げた者たちが、消えている。つまり、………呪いの効果は、軽減されている』



 「な、ならば!これで呪いは……」



『早合点するな』



 次はケルベロスが声をかけた。

 ケルベロスは静かに、たどたどしく言葉を紡ぐ。



『…………柱は、1本ではない。最果てにあるワールド=ドラゴン遺跡までの道のりに10000本ある』



 「…………10000本………………」




 途方のない距離と数に、目眩がした。だって、ひとつの柱に100人は居る。それが10000本となると…………俺の体の血を全て抜くしかない。



 ____上等だ。



 「____続けます。10000本でも100000本でも、いくらでも私は血を捧げます」



 「巫山戯るな」



 「うっ」



 俺を叩いたのは、ラフェエル皇帝様だった。ぎろり、と睨んで言葉を紡ぐ。



 「お前は死ぬ為に此処を訪れたのか?ならばすぐさま帰らせる。死にたがりを死なせてやるほど私は優しくない」



 「ッ!ですが!私は一刻も早く、呪いを___『そんなことしたら本当に死んじゃうよ、お前』………」




 糸目の男は、冷ややかに言った。











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