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『花火大会』当日

 




 セオドアは我に返って、よろよろと再びミシンの前に座り頭を抱えた。



 「どの色も似合ってしまうじゃないか…………そうなったら、俺は何を選べばいい?フリーダムがいちばん困るんだ…………俺の趣味でいいかな?俺の趣味が外れたら、アミィもセラもアドも恥をかいてしまうじゃないか………ああ、そうだ、ラフェエル皇帝様とアルティア皇妃様にも作りたい………おふたりは赤と黒だよな………煌びやかな赤と漆黒に金魚でも泳がせるか…………?



 俺はっ……どうすればいいんだ………ッ!」




 「…………………」




 ……………サクリファイス大帝国に来てから勿論いい変化はあった、けれども乙女思考は悪化している。このままいったら男の尊厳が溶けてなくなるのではないか…………?なんてありえない心配までした。









 * * *





 「………ッ」




 「父ちゃん、そわそわしすぎだぞ」



 「うっ………」



 とうとう『花火大会』当日。群青色に所々赤を散りばめた甚平を身にまとったセオドアとアドラオテルはセオドアの自室に居た。アミィールの部屋でセラとアミィールがアミィールの専属侍女・エンダーの手を借りて着付けている。


 もちろん、浴衣の着付け方、髪の結い方までエンダーに叩き込んだ。エンダーは優秀でものの1時間で覚えてくれた。そこは心配していない。



 それよりも。




 俺が作った浴衣をどう2人が着こなしてくれるのか、それだけがわくわく、ドキドキさせるのだ。まるでデートの待ち合わせで待つ女子の心境だ。そしてこれは正真正銘デートなのだ。




 今回の『花火大会』で、アミィールと俺、そして子供達は城下町にて出店の視察をする。アルティア皇妃様とラフェエル皇帝様は花火を打ち上げると言っていた。来年もやるのであれば次は俺達が子供たちを預けて花火を上げる側に回る、というサイクルにしようと話し合いの末に決まったのだ。



 だから、実質デート。子持ちだけどデートなのだ。



 「ケッ、デートならセラや母ちゃんじゃなくてむっちりオネーサンとしたいぞ」


 「なっ、思考を読むなアド!」



 「口に出てるんだもん。父ちゃんほんとまぬけ」



 「~っ!」




 生意気なことを言っているが、このアドラオテル、とても行く気満々である。先日の試作品を見て、毎日セラフィールに自慢しているのだ。自慢しすぎてとうとう『わたくしもみたかった~』と泣かせたほどである。根性は悪いが可愛い息子だ。



 そんなことを思っていると、コンコン、とノック音がした。それを聞くなりアドラオテルが俺が言うより先に『はいれ!』と言った。





 「____セオ様」



 「パパっ!」





 「…………ッ!」



 アミィールとセラは___薄いピンクに、ところどころ緑を挟んだ美しい浴衣に身を包んでいる。アミィールの長い髪は簪でまとめられ、手には巾着袋をぶら下げている。セラは肩ほどあった紅銀の髪を緩くまとめ白い百合の花を添えている。




 天使だ………天使がここにいる…………俺が作ったから柄も簪も巾着も知っていたけれど…………それを上回る素材の良さ…………!




 「お待たせ致しました。………珍しい服で、少し動きづらいので手間取ってしまいましたわ」



 「へへへ、でも、かわいいの、ね!ママ!」


 「ええ、とても可愛いですよ、セラ」



 2人とも100点満点です。可愛すぎて狡いです。もう俺は花火を見る前に尊死ぬ…………



 そんな馬鹿みたいなことを考え顔を赤くし涙ぐむセオドアに、アミィールはふわり、笑みを向ける。



 「___やはり、セオ様は何を着てもお似合いですわ。アドも、格好いいですよ」




 「父ちゃんより俺の方が格好いいだろう!」



 「何言ってるの?パパの方が格好いいに決まってるじゃない、アドって変ね」



 「なっ、セラこそ!おっぱいないくせにそんな服着るなー!」



 「変態」


 「ぺたんこ」



 「やめなさい、2人とも。………それより、えっと、アミィ、セラ、アド、……似合っているよ」




 セオドアは顔を赤らめながらもそう3人に言ったのだった。








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