表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

435/470

龍神と大天使の禁断の愛

 




 「………………ふう」



 「すぴー」


 「ぐおー」




 夜、子供達がやっと寝た。セオドアはほ、と一息つく。結局アドラオテルはずっとズボンを脱いで契約印を見せびらかしていた。挙句の果てには神殿内にいたアミィール様とスカイ様の前で堂々と仁王立ちをして『見よ!』なんて奇行をしていた。この子供は将来某5歳児漫画の主人公のような奇天烈な性格になること間違いなしだ。



 それを考えると頭が痛い。そしてその男の尊厳を『うるさい』と言って思いっきり引っ張ったセラフィールにも恐怖を覚えた。それを握るのはまだ早い。いや、一生握るな頼むから。



 そんなことを切に願っていると、ふ、と先程のオカマもといウェイトが現れた。

 セオドアは呆れたようにため息を着く。


 「ウェイト様………ここは家族の部屋です。勝手に入ってこないでください」



『まあ!ワタシの扱い酷すぎるんじゃない?………それより、行ってきなさいよ』



 「何処に?」



『決まっているでしょう?アミィールに会いによ。………気になっているんでしょう?』



 「……………」



 そうだ、俺は気になっている。アミィール様は先程泣いていた。悲しそうに、顔を濡らして、子供たちの前で無理して口元だけで笑っていた。聞いたけど『なんでもございません』と言われ、今だって『申し訳ございませんが、1人に』と言って子供達を俺に任せてしまった。こんなこと、滅多にない。……余程のことだと思ったんだ。



 しかし。



 「子供達が__『ワタシが見てるわよ』……本当ですか?」



『ええ。そして、アミィールはこの神殿の屋根の上に居るわ。入口から出て屋根を見なさい。そこにいる。


 貴方は父親、でもその前に……アミィールの夫でしょう?』



 「…………」




 セオドアは無言で立ち上がった。そして、ウェイトを睨みつけるように見て、言った。



 「___子供達を、お願いします」



 ウェイトはそれを聞いてにっこり笑った。





 * * *




 「はっ、はっ…………」



 俺は神殿内を走って入口まで来た。これだけで息が切れるというのは、ランニングが足りない証拠。子供達が一人で寝れるようになったら早朝も走ろう。いや、アミィール様に見てもらうのも一つの手だ。そのあと共に鍛錬をする。………ベッドでアミィール様の帰りを待つよりも楽しいかもしれない。



 それはともかく。



 「………綺麗………」




 外に出ると、大きな月が出迎えてくれた。空ということもあり、月も大きい。思わず見とれてしまう。こんなに綺麗な世界があるのか、と。でも、見とれてばかりは居られない。



 「………ッ、セオ、様………」



 「…………アミィ」



 ウェイトの言う通り___アミィール様は屋根の上に居た。未だに泣いている。普段の彼女からは想像できない、体育座りをして俺を見ていた。



 「アミィ…………降りてきて、私と月を愛でよう」



 「…………いいえ、わたくしは………セオ様の傍に、いてはいけない女なのです」



 「…………え?」



 いてはいけない?どういう事だ?

 アミィール様は月を見た。月光に照らされた横顔は月の精にも見える。きらきらとした紅銀の髪が揺れる、揺れる。



 「___わたくしは、龍神。

 ____セオ様は、大天使。


 大天使は美しい魂、龍神は穢れた魂。

 わたくしがそばに居たら………いつか、セオ様を穢してしまう。だって、白は何色にも染まれる、けど、黒は全てを飲み込む………わたくしは、セオ様を………愛おしい御方を穢したく、ございません」



 か細くなっていく声。

 それが、悲しくさせた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ