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ふわふわで甘いわたあめ

 



 「きゃー!」



 「待てよセラー!」



 「アドも待ちなさーい!」




 次の日、俺達は神殿の近くで鬼ごっこをしていた。本当は街に出て自分の故郷を見たかったのだが、この国で龍神は相当嫌われているんだと聞いた。



 "亡者の思い"の塊だからかな?と思ったけどそうではなく、アルティア皇妃様が以前国民たちに『この国を滅ぼす』なんてとんでもないことを言ったらしい。


 なんというか、………アルティア皇妃様って後先全く考えず動くから、その光景が容易に想像できた。滅茶苦茶だと思う。いや本当に。



 とはいえ、俺一人で街を歩いてもきっと子供たちやアミィール様の心配をして楽しめないだろうし、行かなかったのだ。



 アミィール様がスカイ様と話をする、と言っていたから俺は現在子供たちの面倒を見ている最中だ。


 「パパー、雲の上にわたくし達はいるのですよ!」



 「雲の上で鬼ごっこ楽しい~、もっと向こうに行こうぜ!」




 そして子供達はこのとおり、元気である。普通子供なら知らない不思議な場所に来たらびっくりすると思うのだが、あいにく子供達は『普通』ではない。本当に逞しいというかなんというか。臆病なセラフィールはアドラオテルと比べるとビビりだけれど、実際は豪胆な娘なのだ。親からしたら心配しかない。



 昨日突然翼が生えて大騒ぎだったのに、今はそれさえも感じさせないほど元気で、安心させてくれる。




『あっらぁ、セオドアくんとアドラオテルくん、セラフィールちゃんじゃあない♪』




 「____あ」




 そんなことを思っていると、低いオカマ声がした。見ると___風の精霊・ウェイトが居た。俺はすぐ頭を下げる。



 「すみません、聖域で走り回ってしまって」


『いいのよぅ、スカイ様が許したのでしょう?ならワタシがとやかく言うことはないわ。



 お子ちゃま達~、ファーマメント王国特産のわたあめでも食べる~?』



 「わたあめ?」



 「なんだよ、それ」




 子供達は首を傾げていたが、セオドアは目を輝かせた。わたあめ……!この世界にもわたあめがあるのか!もちろん俺も食べたい。乙女男子の俺はお菓子が大好物で、わたあめは機材がないから無理だと思っていた。





 「みんな、わたあめたべよう!とっても甘くて美味しいよ!」




 「ほんとー?」


 「俺今しょっぱいのの気分ー」




 「本当だよ。


 アドは貰う立場でわがまま言わないの」



 そうセオドアが諭していると、ウェイトはくすくすと笑った。


『アナタ、いいお父さんじゃない。そしてイケメンだわ♪』



 「そんなことないです。けれど、そう思われて光栄でございます」



 ウェイトが子供たちにわたがしを配り終わってから、綺麗なお辞儀をするセオドアにふ、と笑みを浮かべる。



『とても硬いわね。まあ、嫌いじゃないけ、れ、ど♪』



 「う…………」




 ウェイトはにっこりと笑って擦り寄ってきた。オカマが嫌いとかではないけれど、仕草は特別気持ち悪いと思う。



 若干引いているセオドアの手にもわたあめは渡った。がさごそと、封を開けて食べてみる。




 「っ~!」




 甘くてふわふわしていて、美味しい。

 多分前世で食べたわたあめよりも全然美味しい。口の中で溶けていくわたあめが美味しくて、顔を緩める。それは子供たちも一緒だった。




 「あまーい!」


 「はむはむはむはむ」



 「美味しいです!ありがとうございます、ウェイト様」



『ウェイトでいいわよぉ、それより、余程気に入ったのね。わたあめが作れる物をプレゼントしてあげようかしら………なーんて』


 「本当ですか!?」



『うわあっ!』











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