間違っている訳が無い
「……………ん」
「「「セラ!」」」
空の妖精神、スカイの心遣いで、俺達は2日ほどここに泊まることを許された。そして、部屋に案内されたら……セラフィールが目覚めた。どうやら、アルティア皇妃様の呪いが解けたらしい。
セラフィールはキョロキョロと辺りを見渡してから、自分の背中を見た。
「あれ?お背中、熱くない」
「っ、セラのお馬鹿!」
「わっ」
セラフィールに一番最初に抱き着いたのは、アドラオテルだった。『泣かない』と言っていたアドラオテルの瞳には涙が零れている。…………やっぱり、強がっていたんじゃないか。
セラフィールはそんなアドラオテルに戸惑う。
「え?え?ど、どこ、ここ………」
「おばか、お馬鹿お馬鹿お馬鹿!」
「ちょっと、アド、痛いよ………泣いてるの?」
「ぐずっ、泣いてねーやい!ブス!」
「ぶっ、ブスって言わないでよ!」
キャンキャンと吠え始める2人に笑みを零すけれど………心の底から笑えているか、と聞かれたらそうじゃない気がする。
俺は___この国の、王族だった。
しかもただの王族ではない。アミィール様と同じ人外だったのだ。いや、人外という言葉は違う。俺の血は巡り巡って沢山の人間の血が混じりあっているから、やっぱり人間なのだろう。
大天使___そう呼ばれた。
俺の翼も、この瞳も、この髪も………全部、その血統の現れだったのだ。
複雑な気持ちだった。
昔は、アミィール様に釣り合うようにと『不細工でいいから国王とかだったらよかったのに』なんて思っていた。
けど、実際は___アミィール様の一族を倒すために、俺達は天下った。天敵だったんだ。その天敵と恋をして、結婚して、契って、子を為した。
それがいい事なのかはわからない。
俺はちら、とアミィール様を見る。
アミィール様は、未だに泣いていた。
涙が枯れてもおかしくないくらい泣いているのに、優しく子供達を撫でている。
…………本当に、強い人だ。
俺は、やっぱり、どんな血族でも____
「_____アミィを愛している」
「_____セオ様を愛している」
「………!」
「………!」
セオドアとアミィールは顔を合わせた。
泣いているのに、悲しいはずなのに、それでも__俺達は、お互いを想っていたんだ。
そんなの____嬉しいに決まっているじゃないか。
「アミィ…………ッ!」
「セオさ、………っん」
セオドアはアミィールにキスをした。
子供達が居る前では控えているはずだった。けれど、我慢出来なかった。
この苦しみを、悲しみを1人で抱えることなんて出来なくて。
アミィール様も拒まなかった。それどころか、腰に手を回して、自分から深いキスをした。
______どんな立ち位置でも、関係ない。
______俺は、俺たちは、お互いを愛している。
禁断の恋かもしれない。許されないことかもしれない。
でも。
こんなに幸せなのが間違いなわけ、あるか_____。
セオドアとアミィールは暫くキスをしていた。お互いの身体に触れ、お互いの存在を確かめるように。
「…………なあ、セラ。俺たちもあれ、やるか?」
「ふざけないで頂戴、子供はこういう時は寝るのよ」
「…………だね。わかってきてんじゃん、セラのくせに」
「3年もあの二人の子供やってるもんね」
2人はそう言い合って笑い合い、手を繋いで目を瞑った。




