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安心と不安

 







 男は『結ばれてはならなかったのか?』などと思っている。


 女は『愛する御方の人生を自分が滅茶苦茶にした』などと思っている。



 あべこべにも程があるだろう?

 …………誇るべきことなのに、なぜ誇らないのか、私にはわからない。



 だから、口を開いたんだ。




 『____龍神は、もう居ない。血筋が残っていても、苦しめる"亡者の思い"は消え去り、人間と交った末の子供なのだから完全な龍神ではないだろう。


 ____大天使も、だ。大天使はどんな理由であれ天下った。大天使という肩書きを捨て、"愛者の思い"は生き続け大天使の血を引いているが、ほとんど人間と変わらない。



 その二人が出会って、恋をして………子を為した。それだけの話だ。



 我はただ、オーファン家とこの王国の繋がりを話しただけ。



 この世界のために天下ったオーファン家を責めるつもりも、この世界の常識を自ら壊し世界に贖罪を続けている龍神を憎むこともない。



 ____仮に結ばれない運命だとして、お前らはそれを受け入れるのか』



 「受け入れるわけございませんわ!」



 「受け入れることなどできない!」



 アミィールとセオドアは同時にそう答えた。スカイはそれを聞いて笑う。




 『ならば、問題なかろう?………それはともかく、その翼をどうにかしたいのではないか?』



 スカイはそう言って俺の腕の中にいるセラフィールを見る。そうだ、大天使とか龍神とか考えるのは後だ。




 「はい。私の娘を___どうか、翼をどうにかしてください」



 セオドアは頭を下げた。スカイはコツ、コツと靴を鳴らしてしゃがみ、そして_____



 「………!」




 セラフィールに、キスをした。空色の魔法陣が生まれる。文字は踊りながら、背中___丁度翼の生えている付け根あたりに滑り込んだ。



 すると、不思議なことに羽根がぶわ、と弾けて大翼が消え去った。スカイは唇を離して言う。



 『___我は、オーファン家が出ていった際もこうして唇を交わした。そして契約をした。そうすれば、この翼を操れるからだ。人間として暮らしていくには………翼は、邪魔だろう?』



 「…………ッ、ありがとうございます!」



 「ありがとうございます!」


 セオドアとアミィールは勢いよく頭を下げた。スカイは面倒臭そうに片手を上げた。



『よい。………大翼が出たのは契約が薄まったのと…………龍神の拒絶だ。亡者の思いと愛者の思いがぶつかった結果。



 そちらの子供は___』



 「あは~ん、美人なオネーサーン♪」



 「…………」




 「……………」




 シリアスなシーンだと思っていただろうが、このアドラオテルだけはひたすらこうして口説いていたのだ。なんというか、雰囲気をぶち壊しにしない為に見ないようにしていたが、流石にうざくなってきた。



 「わっ、わーっ!」


 セオドアはアドラオテルの服を引っ張り自分の隣に座らせた。スカイは呆れた顔をしながら言う。




『…………そちらの子は、強いな。亡者の思いも愛者の思いもどちらも自分だけの力で抑えている。しかし_____そのせいで、不安だな』




 「………どういう、事ですか………?」



『_____その子は、…………いや、確証のないことは、言えない。すまない』




 スカイは謝った。………納得なんて、できるわけが無い。



 「スカイ様、どうか、教えてください。___アドラオテルは、どうなるのですか」



『___すまない。言葉にしたら、……その子の決意を踏みにじる』



 「……………」



 「……………」




 沈黙が、流れた。

 セオドアはぎゅ、と拳を握った。

 ____それじゃあ、まるで、まるでアドラオテルが………



 アミィールはぎゅ、とセオドアに抱きつく。泣いている。ぽろぽろと熱い涙が零れて、俺の涙と混ざっている。



 どうすれば、いい?

 俺は____どうすればいいんだ。




 俺達は静かな神殿の中、しばらく声を殺して泣いていた。










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