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主人公の血筋

 


 「____え?」




 突然『オーファン家』と言われ、顔を上げてしまう。女騎士は目を細めて俺を見ていた。



『サクリファイス大帝国の結婚式を見た時に、お前の翼を見た。アレは___オーファン家に許されし大翼』



 「待ってくださいまし、スカイ様。___オーファン家と、このファーマメント王国はどのような繋がりなのか、はっきりさせていただけませんか?」




 アミィールは黄金の瞳を冷たく光らせた。まるで『言うな』と言われているような気分になる。………アルティアもこの目をしていたな。



 スカイはそこまで考えてふ、と笑みを零した。



『その様子では………お前は分からぬようだな。オーファンよ』



 「は。………お恥ずかしながら、セオドア・ライド・オーファンは何も存じ上げません」



 スカイはそれを聞いて『セオドアか、良い名だ』と言って、立ち上がった。そして、昔話をするような口調で言う。




『オーファン家___それは、9000年前までこのファーマメント王国の王族だった一族の事だ』




 「………は?」




 王族?俺が元王族だと言うのか?平凡な主人公が?理解できない。だって、俺達は公爵家で、それで…………




 グルグルと考え出すセオドアの思考を読んだスカイは『最後まで話を聞け』と言って続けた。




『____今はファーマメント王国、と呼ばれているが、9000年前まではオーファン王国と呼ばれていたんだ。


 "天国にいちばん近い島"、………この国の者は、皆人間ではなく………お前達の言葉でいえば天使、という亜人だったのだ』


 「____では、セオ様………いえ、セオドア様は………」




『最後まで聞けと言うとろうが。話さんぞ。


 ………天使というのは天の使い。しかし、この世界には死神がいる。だから、天使というのは"醜く浅ましい生き物の邪念、世界を滅ぼさんとした亡者の思い"で生まれた"龍神"と似ている。



 天使は"至福を感じ、ユートピアを心の底から愛した思い"なのだ。だから他の国と違い人口は少なく、地上に降り立てば呼吸が出来なくなる。醜い思いに弱いからな。


 けれど、オーファン家は____その、"愛者の思い"の結晶の一族なのだ。だから地上でも息ができた。そして、"稀有な力"を持ってた故にこの国の大天使__王として君臨していた』




 スカイはそこで言葉を切って、『失礼する』と言ってセオドアの顎を持ち上げた。



『その証がこの優しい群青色の髪と、慈愛の色である緑の瞳、そしてその子供の持つ大翼だ』




 「なっ…………!」



 「スカイ様!セオ様に触れないでくださいまし!」





『失礼、と言っただろう。………とにかく、オーファン家は心の底から優しい者の集まりでな、"自分達は地上の美女を見初めて降り立つ"と伝承しているが、現実は違う。


 "亡者の思い"である"龍神"の対抗勢力として、地上に自ら降り立ったのだ』



 「では、………セオ様は、わたくしの、………」



 アミィール様の声が震えている。

 きっと、俺が今喋っても、震えるだろう。



 俺達は_________天敵、だったのだ。




 龍神は"この世界を壊したかった生き物の思い"。


 天使は"この世界を愛したかった生き物の思い"。



 相容れない、存在だったんだ。

 …………こんな、こんなゲームだったのか?

 なあ、神様。……なんで、俺達をそうして絶望に落とすんだ?



 あんまりじゃないか……………。


 セオドアはそこまで考えて、涙を零した。アミィールも狼狽している。俺たちの運命は___そもそも、混じりあわなかったんだ。



 けれど。俺達は出会った。

 お互いを好きになり、愛し合い、………天使と龍神の間に、子供が出来た。


 それは___いい事なのか?



 『_____誰も、悪いとは言っていない』



 「…………ッ」







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