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息子は純粋

 





 「____セオ様、大丈夫ですか?」



 「…………ああ」




 俺達は今、空を飛んでいる。アルティア皇妃様の聖の幻獣の鳥・ヴァルに跨っているのだ。腕の中のセラフィールはすやすやと眠っている。背中には____大きな、とても大きな白い翼。



 この苦しみは俺にもわかった。

 俺がフライを初めて使った時、痛すぎて泣いた程だ。この翼をみんなは美しいと言うけれど、この翼を生やすのは____痛いのだ。




 「おそら~ぶんぶんぶ~ん!」




 アドラオテルはヴァルの上でくるくると踊っている。………それさえも苛立たせた。俺は最低すぎる。自分の無力さを子供にぶつけようとするなんて………!



 ぎり、と歯ぎしりをするセオドアを見て、アミィールはアドラオテルに言う。



 「…………アド、大人しくしてくださいまし。貴方の姉が苦しんでいるのですよ」



 「____悲しんだら、セラの苦しみは無くなるの?」



 「___!」



 アドラオテルはふざけるのをやめて、ぽつり、そう言った。ぽつり、ぽつりと零すように、アドラオテルは空を見上げながら言う。



 「セラは………いつも頭硬いしゆーずーきかないしビビりだし泣くけど、…………父ちゃんや母ちゃんのこと、大好きだ。俺の事もきっと大好きだ。


 大好きな人が泣いてて、セラは幸せなの?」



 「……それは………」



 「____俺、セラが泣かなくていいように、笑ってなきゃいけないんだ。


 だって俺、弟だもん。俺が泣いたらセラがお姉ちゃんで居なきゃいけなくなる。


 だからっ!セラが寝ていても、俺はその分騒ぐんだーッ!」




 アドラオテルの大きな声に、セオドアとアミィールは涙を流した。

 アドラオテルは、たまにこういうことを言うんだ。悪戯好きで巫山戯てばかりで人の話なんて全く聞かない。けれど、ちゃんと『何が大事か』をわかっているんだ。まだ3歳なのに、自分を強く持っている。




 それは______誇らしくて、泣かないなんて無理だ。




 セオドアはセラフィールを抱きながら、アドラオテルも抱いた。




 「………ごめんな、ごめん………ダメな父ちゃん、だな」



 「そうだぞ、ダメダメだぞ。母ちゃんも、ダメダメ。だから俺が、俺だけでも、元気で居てあげるから。


 思う存分ダメダメになれっ!」



 「……ッ、ふふ、そんなことを言われたら、ダメダメになんてなれませんわ。


 ねえ、セオ様」



 「ははっ、そうだな。………本当に、その通りだ」



 セオドアはくしゃり、アドラオテルの頭を撫でてから、向かっている方向を見る。



 ___俺の故郷。俺の故郷がセラフィールを苦しめているのなら、それを知るべきだ。



 泣くのはその後でいい。カッコ悪くなるのはその後でいい。………今はただ、このかっこいい息子の前で格好つかせてくれよ。




 アミィールはセオドアの顔を見て、微かに笑みを浮かべて、ヴァルの毛を引っ張った。ヴァルはそれに合わせて加速していく。



 1分、1秒でも早く、早くつかなければ。

 セラフィールの、セオドア様の………この謎の翼について、わたくしは知るべきだ。





 一家を乗せた幻獣は物凄い速度でヴァリアース上空へ飛んだ。







 * * *







 「アミィ、ここらへんか?」




 「ええ、そうですわ」





 セオドアは何度も聞き返す。何故なら…………アミィール様が連れてきてくれた場所はただの雲だから。どこにも国どころか建物がない。辺りを見渡しても、何も無いのだ。


 しかし、アミィールとアドラオテルには見えている。



 「母ちゃん、ここ、すごいよ、たくさん、たくさん羽根が生えてる人、いるよ」



 「ええ。此処がファーマメント王国なのです、………貴方のパパの、古い故郷です」



 「………?」




 どうやら、見えていないのは俺だけのようだ。でも、本当に何も無い。こんな俺がその王国の血筋を持つ人間なのか…………?


 「セオ様____よく見てくださいね。


 今、開けます。……………防御解除魔法・改」




 「____!」




 アミィール様がそう呟くと、空中に波紋が生まれた。そして、ヒビが入って………パリン!と弾けた。



 そして____雲の上の大きな国の全貌が、見えた。













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