森の妖精神ルート
つい最近知った地名が、俺の先祖の故郷………?おかしい。だって、ゲームでそんな設定なかった。………なかった?
セオドアは頭をフル回転させる。
そう、それは___森の妖精神・リーファルート。
リーファは主人公である俺、セオドア・ライド・オーファンと偶然出会う。関わっていくうちに、セオドアはリーファに『貴方はわたくしを追って故郷を離れこの地に舞い降り、何度も何度もオーファン家の人間として転生しわたくしと出会ったのです』といわれるんだ。
それは運命的で、乙女心を擽られたんだ。けど、それをこの状況に当てはめてみると___俺は、俺の先祖は、リーファと巡り会うために天下ったということだ。
じゃあ、やっぱり………………俺は、ファーマメント王国の………
そこまで考えて、セオドアはよろよろと立ち上がった。
「ファーマメント王国、出身なのかも、しれません………申し訳ございません………」
「セオ様………ッ、謝らないでくださいまし!セオ様はなにもしておりません!」
アミィールは泣きながら大きく首を振った。セオドア様が悪い事なんて、ない。わたくしはそれを知っていたとしてもこの人を愛していた!だから謝ることなんて………けれど…………この翼を、どうすれば………
涙を流す夫婦を横目に、ラフェエルは難しい顔をする。
「しかし、妙だ。ファーマメント王国の人間の翼は小さい。このような大きな翼を持つ国民など居なかった」
「そうね。………もしかしたら、『治癒血』にも関連があるのかも」
『治癒血』___俺の回復チート能力。血一滴で、命を操ることの出来る能力だ。
繋がっている、のか…………?
全ての事柄が………………繋がって…………
「お母様、お父様、………お願い致します、どうか、どうかお知恵をお貸し下さいまし」
アミィールは泣きながら頭を下げた。俺も下げると、唇を噛んで拳を作っていたアドラオテルも勢いよく頭を下げた。
アルティアとラフェエルは顔を合わせる。
「そうね…………詳しいことを調べるのであればファーマメント王国に直接行くべきだと思うけれど、どう思う?ラフェー」
「そうだな…………それが1番だろう。しかし、場所をどう調べる?あの国は『動いている』のだから」
「動いている…………?」
セオドアが聞くと、アルティアはこくん、と頷いた。
「あの国は雲の上。雲が動けば動くわ。………でも、安心して。ドゥルグレならある程度の場所はわかるわ」
「……………!」
セオドアはそれを聞いてすぐに手の甲にあるオレンジ色の契約印を見た。それに向かって、悲鳴を上げるように叫んだ。
「太陽神様!お知恵をお貸し下さい!」
『うおっ、うるせーな』
セオドアが呼ぶのと同時に小さい太陽神が現れた。太陽神・ドゥルグレ。乙女ゲーム『理想郷の王冠』の攻略対象キャラであり、俺と契約した神だ。
ドゥルグレは『みなまでいうな』と一言置いてから言う。
『ファーマメント王国の場所だろう?丁度ヴァリアース大国の上空だ。……空の妖精神も、風の精霊も居るよ。
だが………クソ女。あそこがどういう場所かわかっているだろう?この4人じゃあ心元ないんじゃないか?』
「そうね。………けれど、私がはいるのも良くないでしょう」
『仕方ねえ、俺が話をつけといてやる。とりあえず、急ぎなら早く向かえ。移動しちまう』
太陽神はそれだけ言ってふ、と消えた。
アルティア皇妃様はそれを見送ってから俺を見た。
「貴方達には私のヴァルを貸してあげる。それで今すぐ飛んでいきなさい。
いい?ファーマメント王国で『ピンクのドラゴン』に会ったら『自分達はこの国に危害を加えない!空の妖精神にこの翼のことを聞きに来た!』と叫ぶの。
アミィール、………貴方は1度行ったことがあるわね」
「…………はい。しかし、わたくしが行っては………」
「大丈夫、国民達は私たちを『許してくれた』。安心して行ってらっしゃい」
「……………」
話はわからない。けれど、はやくセラフィールを助け出したい、その思いが今は強かった。