主人公の本当の故郷
アドラオテルに言われて、アミィールとセオドアは翼を見る。確かに___俺のフライの魔法の翼である。これは……代償ではなく……俺の……!?
「失礼するわよ……って!なによこれ!おっきな羽根!」
「騒ぐな、セラが辛い時に……セオ、アミィ、何が起きている?」
「わたくしにもわかりません……っ、けれど、この翼は……セオ様と同じ、同じ翼なのです!」
アミィールは涙目で訴える。アルティアとラフェエルはそう言われて見る。確かに、そうである。
つまりこれは龍神絡みではない。
……………聞く必要が、あるな。
「____セオ」
「…………はい」
ラフェエルに呼ばれて、セオドアは力なく返事をする。
………俺の、俺の血のせいで、セラフィールが傷ついている。苦しんでいる。俺の、俺の血のせいで……こんなに、こんなに辛いのか……アミィール様はこんな気持ちでセラフィールやアドラオテルの代償の時、泣いているのか……その気持ちが今、凄くわかる………
泣き出すセオドアに、ラフェエルはかつかつと靴を鳴らして、肩を掴んだ。
「セオ、落ち着け。現実を受け止めろ。
そして、………知っていることを話せ」
「ッ、ラフェエル、皇帝……様……私、は……」
「…………だめね、セオくん、今弱っている。
とはいえ放置は出来ないわ」
アルティアはそう言って、アミィールに抱かれているセラフィールに触れる。荒い呼吸に真っ赤な顔。……辛そうだけど、代償の心配はなし。ならば、少し呪術で眠らせましょう。
アルティアはそう考えてから、ぽう、と黒い光を纏う。
「………呪術・"眠りなさい"」
「………っ!お母様!」
アルティアの言葉に、苦しんでいたセラフィールはふ、と眠りに落ちた。アミィールは激情する。
「なにをっ、なにをなさるのですかっ!」
「眠らせただけよ。意識があれば辛いでしょう。………翼を見る限り、害はないわ。大方発現時の熱で熱くなっているだけ。
それよりも………セオくん」
アルティアは呆然と涙を流しているセオドアに言う。
「なんでもいい。些細なことでもいい。なにか、何か知っていることがあるなら教えて頂戴。
貴方は何故、フライの魔法で翼が生えるの?」
「…………ッ」
セオドアは、ごくり、唾を飲む。
自己嫌悪に陥るのは今じゃない。俺の知っていることが、セラフィールを救うんだ………!
「____詳しいことは、私も知りません。ただ、奇妙な言い伝えが、あります」
「言い伝え?」
ラフェエルはぴくり、眉を動かした。セオドアは涙を拭いて、口を動かす。
「"オーファン家は元々空に住んでいて、地上の美女を好きになり天下りした"___その言い伝えです。
確証はありません。けれど、私達の家系ではフライを使えば翼が生え、伝達魔法を使えば鳩になるのです。
しかし、空になど人は____あ」
そこで、以前アミィール様が妖精神の話をしている時に聞いた言葉を思い出す。空の妖精神、風の精霊が住む場所は___………
「………___オーファン家はファーマメント王国出身、か」
その答えを言ったのは、ラフェエルだった。アミィールは『しかし』と声を上げた。
「ファーマメント王国の人間は地上で息が出来ません!そんなのっ、……」
「原理はわからないわ。けれど………ファーマメント王国は確かに、翼の生えた人間しかいなかった。
つまり、___オーファン家はファーマメント王国の血統を持っているのよ」
「____ッ」
※ご案内
ファーマメント王国についての詳しい話は前作をご覧下さい。