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穏やかで小さな幸せ

 




 「____血を見ていないな?」



 そう聞いたのはこのサクリファイス大帝国皇帝であり、このユートピアで1番権力を持つ紅銀の短髪、紅い瞳の美丈夫でアミィールの父・ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。



 アミィールはその問いに顔をあげる。

 薄く笑みを浮かべていた。



 「もちろんにございます。………わたくしは人の親でございますゆえ」



 「人の親ね~。ラフェーも少し見習ったら?」



 そう軽い口調で言うのは黒い長髪、黄金の瞳の美女、この国の皇妃であり母親のアルティア=ワールド=サクリファイスだ。『最強生物』、『最上の神』であった龍神の末裔で、この世界で1番危険な女だ。





 「…………アル、うるさいぞ」



 「はぁ~い。それより、グレンズス魔法公国が潰れるか~、ドゥルグレが面倒見てたんじゃないの?」



 「ドゥルグレは力で導くしか脳がない。人を見る目は最悪だ。………で、あれば我々サクリファイス大帝国で面倒を見た方が早い」



 「私達の負担は増える一方ね。いつになったら私は平民になれるのかしら………」



 「ふん、まだこのじゃじゃ馬に国など背負えるか」



 「ふふ、わたくしがこの国の頂点に立った暁には現皇帝よりも素晴らしい国に致しますわ」



 「……………」




 「………………」





 親子はお互い剣に手をかける。

 これは喧嘩が始まるかしら?止めるの面倒なのよね~………あ、その必要ないかも。




 アルティアがそう思ったのと同時に、玉座の間が開いた。すると子供達が飛び込んできた。




 「ママ~!」



 「母ちゃ~ん♪」



 「セラ、アド!」



 子供達はアミィールの元へ来るとぎゅう、と抱き着いた。アミィールもそれを受け止め抱き締める。




 「おかえり!」


 「おかえり!」



 「ただいま帰りました、セラ、アド。



 そして____」



 アミィールは1度愛おしい子供から目を離し、顔を上げた。そこには____愛おしい御方。優しい笑みで、出迎えてくださった。




 「…………おかえり、アミィ」



 「____ただいまかえりました、セオ様」




 アミィールは目を細めて笑う。男___セオドアはそれを見て皇帝の前だというのも忘れて抱き寄せた。結婚して6年、二人の愛は冷めることを知らないのである。




 * * *






 「アミィ、本当にお疲れ様」



 「ありがとうございます、セオ様」



 セオドアの自室に戻ってきた家族一同は頬にキスをし合う。2日、たった2日なのに寂しかった。勿論、子供達が居るからその世話で大変だったけれど、それでも俺はアミィール様が傍にいないと不安で寂しくなって………子供達2人に『ちゅーしないで』と言われながら抱きしめて寝ていた。



 「セオ様、わたくし、………セオ様がいなくて全く寝ていないのです」



 「な、大丈夫かい?」



 「ええ、………いえ、大丈夫ではないので、……失礼致します」



 「___ッ」



 アミィールはそう言ってセオドアの膝に頭を置いて寝転ぶ。ベッドで寝ればいいのに、わざわざ俺の膝の上って…………!



 嬉しさと戸惑いで顔を赤らめるセオドアを下から見上げるアミィールは少し意地悪な顔をしている。



 「セオ様の困ったお顔、大好きです」



 「あ、アミィ………からかわないでくれ」



 「からかってなどございませんわ。………わたくしは、貴方がいないと寝ることもままなりません。子供達がいないと元気も出ません。


 ご飯は食べたのか、お風呂に入ったのか、ちゃんと寝てるのか、お菓子ばっかり食べてないか……たくさん、たくさん考えてたら……ねれな、くて……すう」




 アミィール様はそこまで言って目を閉じてしまった。………どうやら、本当に寝ていなかったらしい。この御方はいつだって責任感が強く、俺のことを、子供達を愛してくれているから死ぬ気でたくさんの仕事をこなしてきたのだろう。




 セオドアはそう思いながらサラサラとした紅銀の髪に触れる。………よかった、血の匂いはしない。『任務』はめっきりやらなくなった、という。アミィール様が乱心して『抱いてください』ということも無い。



 穏やかで、小さな幸せの日々が続いている。



 そんなことを実感していると、『ママにお菓子を作るんだ!』 と言って自分たちでクッキーの型抜きをやり、オーブンの前でうきうきしていた子供達が戻ってきた。


 「クッキー焼けた!」



 「父ちゃん!クッキー!とって!」




 「待ってね、………ママ、寝ちゃったから、しー」



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