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※熱中症対策は行いましょう

 





 「……………あちゅい」




 「…………………」





 セオドアの自室にて。アドラオテルがベッドの上でそう呟いた。そしてこの『あちゅい』は200回目だ。


 サクリファイス大帝国の夏は暑い。冬はそんなに寒くなく、夏はとても暑いのだ。5年この国に居るとそれに慣れるけれど、アドラオテルは未だ2歳。暑さに耐性がないのだ。…………とはいえ。



 「暑い暑い言っても涼しくはならないよ?アド」



 セオドアは汗を拭きながら、息子に近づく。息子はすすす、と距離を取った。これは傷つく。



 「あちゅいから、ちかづかないで」



 「……………」



 2歳を迎えて、生意気さに拍車がかかった気がする。自分の子供じゃなかったらイラっとしていただろう。息子でもイラッとするのだから。



 「ぱーぱーあいすーあいすー!」



 「さっきも食べただろう?お腹壊すからだーめ」



 「…………あいちゅ、たべちゃい」



 「……………赤ちゃん語使ってもだめだ」




 「なーんーでー!食べたい食べたい食べたーい!」



 そう、短い手足をばたつかせてごねるアドラオテル。これは教育である。アドラオテルは特に我儘だからな。しっかりしつけなければ…………




 とはいえ。



 この暑さの中放置して熱中症になるのは怖いな。この世界にはクーラーはもちろん無い。前世の学校で保健の授業を受けた時先生が言ってた。乳幼児は熱中症になりやすい、と。




 これは本格的にどうにかしなければ…………




 「あいちゅあいちゅあいちゅあいちゅあいちゅあーーいーーーちゅーーーー」



 「……………はあ」




 そう本格的に駄々を捏ねながらアドラオテルに抱き着かれたセオドアは大きなため息をついて結局アイスを与えてしまうのでした。






 * * *






 「最近子供達が暑いって騒ぐ?」




 毎日の夕食の際、それとなく話題に出してみた。セオドアとアミィールは頷く。



 「はい、アドはこのままではアイスばかりを食べてお腹を下します」



 「セラも口には出さないのですが…………最近ドレスを脱いじゃうのです」



 「あついのやー!」



 「あついのやー!」




 子供達はタコさんウインナーを持ちながら足をバタバタさせる。宙に浮いて駄々を捏ねないだけマシであるが、紅銀の短髪、紅い瞳のサクリファイス大帝国皇帝、ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスは甘くなかった。




 「放っておけ。この国で生きていく以上耐性は必要だ」



 「お父様、それを2歳の子供達に言うのは少し酷かと」



 「誰しもが通る道、甘やかすわけにはいかん」



 「じーじけちーけちんぼー」



 「けちー!」



 「………………」




 天下のラフェエル皇帝様も、孫達の言葉には弱いらしい。とても不愉快な顔をなさっている。そんなラフェエル皇帝にガハハ、と笑いかけ、アルティアが声をかけた。



 「でもそうね~、私も可愛い子供たちが熱中症になるのは嫌だわ……………あ!そうだ!


 プールを作ればいいじゃない!」



 「………?」



 「ぷーる………?」




 「…………その手がありましたか………!」





 ラフェエルとアミィールが首を傾げる中、セオドアは目を輝かせた。夏の風物詩といえばプールだよな、子供達がプールで遊ぶ姿を見たい。というか水着姿を見たい。



 もはや母親の心境のセオドアは立ち上がる。



 「プールを作りたいですね!しかし、ビニールなどこの世界にあるのでしょうか…………?」



 「あら、何言ってるの?」



 「え?」











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