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忘れた頃にやってくる

 



 「ぱぱー!お花ー!」



 「ふふ、セラ、走ったら危ないよ」



 花を見て喜ぶ娘に注意するのは群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスである。


 彼はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公に転生したが、攻略対象キャラを選ばず大帝国の皇女に求婚され、結婚。現在2歳になる子供達の父親である。



 そして。



 そのセオドアにこうして花に囲まれながら片手を上げて笑っているのは子供の1人である、紅銀の髪、黄金と緑の瞳の可愛らしい娘、セラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイスである。



 2人は現在、春真っ盛りの庭園にて散歩をしている。

 ………もう子供たちは2歳だ。つい最近まで生まれて浮かれていたと思ったら、もう自分で走り回って遠くに行ってしまう。………もしかして、こうして俺からも早く離れていくのではないだろうか………




 そう考えただけで泣けてきた。

 彼はビビりでヘタレで乙女な21歳です。



 「?パパ、泣いているの?」



 「ううん、泣いていないよ。………それより、そろそろ戻ろうね」



 「まだ草むしりしてないよ?」




 そう言ってセラフィールは首を傾げた。この可愛さを見ておくれ。こんなに可愛いんだぞ俺の娘は。やばいだろう。天使なんだ。俺と一緒に草むしりをするという夢が叶うんだぞ?女の子万歳だ本当に…………



 とはいえ。


 セオドアは優しく笑って諭すように口を開いた。



 「草むしりをしたいけれど、今日は雨が降るとドゥルグレ様が言っていたんだ。


 だから、早めに中に入ろうね」



 「えー?うーん、雨が降れば、お花さんもっと咲くー?」



 「ああ、咲くよ。綺麗に咲くためには雨も必要なんだ」



 「じゃあ、我慢する!晴れた日にやろうね、ぱぱ!」



 「ッ………ああ」



 落ち着け、俺の胸。可愛いのはわかる。けれど心不全は起こすな。ときめきで命の危険を感じるな。強くなるんだ俺……!



 そんなことを考えると、ぽつ、と雨が鼻先に当たった。やばい、本当に降ってきた。早く入らないと____!?




 そう思ってセラフィールを見たら………倒れていた。



 「セラ!」




 セオドアはすぐに駆け寄る。抱き上げると、顔を赤らめ、震えて………息を荒らげていた。見たことがある症状………これは、『代償』だ!



 「ッ、セラ!少し揺れる!我慢してくれよ!」




 セオドアはすぐさま抱き上げて城内に走った。




 * * *




 「セラ………ッ!」




 自室の扉がノック音を立てることなく、開いた。入ってきたのは____紅銀の髪、黄金色の瞳の美しいサクリファイス大帝国皇女であり俺の妻であるアミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス様と腕に抱えられている俺の息子である群青色の髪、紅と黄金の瞳のアドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。




 アミィール様はすぐさまベッドに来て、セラフィールに触れた。セラフィールの容態は落ち着いている。


 ………俺のチート能力『治癒血』の効果だ。

『治癒血』___あらゆる生命の回復を齎し、命さえも操れる強力な血。………本当は義父であるラフェエル皇帝様を呼んで行え、と言われたけれど、苦しんでいる子供を放ってなどおけない。親指を少し切って触れたのだ。



 俺のチート能力を駆使しても、『代償』は消えることがない。ただ、抑制するだけ。………わかっているけど、これしか方法が無いんだ。悔しい。



 でも1番悔しいのは俺ではなく___アミィール様だ。

 そう思い、前を向くと………アミィール様は目の前で泣いていた。



 「ごめんなさい、ッ、ごめんな………ッ」



 「アミィ、アミィは悪くない、……」



 「ですがっ、………『代償』はわたくしのせいです………」



 「ッ…………」





『代償』___それは、アミィール様の母親・アルティア皇妃様が復活したことにより、生まれてしまった障害だ。溢れ出る魔力に体が受け止めきれず脆くなり、こうして熱や苦しみを引き起こしてしまう。

 

 でも、これは誰が悪いとかそういう問題じゃないんだ。













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