Bitterなお付き合い
アミィール様は楽しげに笑う。
それを見てるだけで俺も幸せになった。
「でも、レイは遊び人だからな。浮気はさせないように気をつけなくては。
アミィの大切な侍女を傷つけるなんて、私が許さないから、安心しておくれ」
「いいえ、こちらのセリフですわ。エンダーも男漁りが趣味なので、どうにかしなければ…………しかし、レイ様という御方がありながらしないでしょう」
「本当に困った従者達だね」
「そうですね。…………そろそろ寝ましょうか。おやすみなさい、セオ様」
「おやすみ、アミィ」
2人は子供達の頭上で唇を交わす。距離が遠くて寂しいけれど、間に寝ている子供たちも愛らしいから我慢である。アミィールは唇を離してから電気を消した。
____今日もいい夢が見られそうだ。
* * *
レイとエンダーは正式に付き合うことになった…………のだが。
「は!?結婚しない!?」
「わ」
セオドアはセラフィールを抱きながら大声を出す。びっくりしたセラフィールはぱちぱちと大きな黄金と緑の瞳を見開いている。そんな2人を他所に、レイは呑気な声を出した。
「ああ、しないよ」
「なんでだよ!結婚する流れだっただろう!?」
「だって、俺達従者だし、2人で屋敷を借りて~なんて面倒くさいだろう?城暮らしは楽しいしな」
「…………本音は?」
「本音もなにもねーよ。俺達はお前達が動き始めたら動かないとならないんだ。乳繰りあってる暇はないんだよ。
そりゃあ、お互いの部屋に泊まることはあるけどな。
いいだろう」
「……………」
ドヤ顔をしているが、要は半同棲カップルである。レイは『それに』と言う。
「情報収集の際、異性と寝る時だって勿論あるし、付き合っていない体の方がなにかと楽なんだよな」
「なっ…………!」
レイの発言に言葉を失う。
コイツなんてこと言うんだ!?
そんなこと大切な人以外としちゃいけないに決まっているだろう!?
「…………!………!」
セオドアは言葉にならない悲鳴を上げながら顔を赤らめている。レイはいつも通り笑った。
「仕方ねえだろう?俺達は城のことを知ってなきゃいけねえんだ。エンダーだって好きで男漁りをしてるんじゃねえ。
………多分」
「不確定じゃないか!それで付き合っているって言うのか!?」
「あーお子ちゃま皇配様には分からねえよ。アミィール様しか女は知らないもんなあ?」
「~ッ!」
「ぱぱー、おとこあさりってなあに?」
「セラ!そんな言葉忘れるんだ!………おいレイ!本当にやめろ!特に子供の前では!」
この後セオドアは必死にセラフィールに『世の中には知らなくていいこともあるんだ』とこんこんと教えこんだとさ。
* * *
執務室にて。
「エンダー!れーなんてやめて俺にしとこうぜ!」
「まあ、素敵なプロポーズですね、コロッと落ちちゃいそうですわ」
アドラオテルはぎゅう、と抱きつきながらエンダーを口説いている。エンダーは棒読みでそう答えている。
それを見ていたアミィールは、厳しい顔で言った。
「エンダー、わたくしのアドに手を出したらどうなるかおわかりで?」
「…………………わかっております」
「ママ、おれ、エンダーと結婚する~」
「アド、わたくしに怒られたいですか?」
「…………ひぅ」
アミィールのキラースマイルで石像のように固まるアドラオテルでした。