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勝負の行方

 




 次の日の夜、俺たち家族は鍛錬場に来ていた。アミィール様に誘われたのだ。『エンダーとレイの勝負を見に行こう』と。2年前から気にかけていたから、もちろん喜んできた。………のだが。







 「ふっ!」



 「くぅっ!」




 エンダーは軽々と大きなトゲトゲの鉄球のモーニングスターを振り回している。レイは辛うじてそれを躱すが、直ぐに闇魔法がレイの体目掛けて飛んでくる。レイの防戦一方だ。



 レイは強い。俺は勝ったことがない。………けれど、当然な気もする。アミィール様の侍女だ。弱いわけがない。改めて、そんな相手に勝負を申し込めるなと感心する。やはりレイは凄い。




 「れー!ふんばれー!おまえのあいはそんなものかー!」



 「アド、暴れないでくださいまし」




 アドラオテルは声を張り上げてレイを激励している。なんだかんだ、優しい子である。自分もエンダーが好きなのに応援できるのだから………強い子だ。



 セオドアはそこまで考えて、アドラオテルを撫でる。




 「アド、応援してやってくれな」



 「あたりまえだよ!はなしかけないでぱぱ!


 おーい!まけるなー!」



 「わたくしもおうえんしますわ!がんばってー!」




 セラフィールも、アドラオテルの隣に立って声を枯らして応援している。………レイは俺の大切な友達だ。だから、こういうのは嬉しかった。



 「セオ様、わたくしたちも応援致しましょう」



 「そうだな。…………レイ!頑張れ!」



 「頑張ってくださいましー!」




 親子はみんなで声を出した。




 * * *





 ____わたくしの応援は無しでございますか。



 エンダーはモーニングスターを振り回しながら、考える。いくら投げても、いくら攻撃しても…………レイはしつこく責めてくる。




 諦めればいいのに、私のことなんて。



 人外で、侍女で、………アミィール様の言葉を借りれば『穢れている』。



 そんな私を好きだなんて、笑える。



 でも、もっと笑えるのは____





 そこまで考えて、きぃん!と鉄が擦れる音がした。モーニングスターが飛んでいく。レイが距離を詰めてきた。



 エンダーはすぐさま魔法を唱えようと構えた時____レイに押し倒された。そして。




 剣先が___目の前に、向けられた。



 銀色の剣、金色の逆立った短髪、茶瞳……………必死な、熱の篭った顔。



 そう。



 私は____人外で、沢山の男を嬲ってきたのに、今更、この男に心を奪われている。



 友の、主人ことばかり考えて動いている忠臣。軽いノリは人の心を容易に掴み、誰かのために犠牲になれる男。



 ____この男を、好きになってしまった私は、勝負などしなくても、負けていた。




 悔しくて、認めたくなくて、ムカついて。ボコボコにしてやってるのに向かってくるのが嬉しくて…………さらに好きになって。



 私の主人が色ボケしたせいでしょう。私は悪くない。私が感化されたのは私が悪い訳では無い。



 けれど。




 「____エンダー、勝ったよ、俺は」



 「____お見事です、レイ様」



 「____嘘じゃ、ないんだよな?」



 「____嘘でしたら私はあなたを見上げてませんわ」




 「……………改めて言わせてくれ、エンダー」




 レイはそう言って剣を下ろした。そして、ポケットから小さな箱を出して、開いた。



 ピンク色の石のついた指輪。月に照らされている金髪が揺れる。



 「____俺と、付き合ってくれ」











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