侍女の申し出
「アミィール様」
執務室にて。
休憩中、アドラオテルの相手をしていたアミィールに専属侍女・エンダーが声を掛けた。
アミィールはアドラオテルを抱きながらエンダーを見る。
「なんですか?執務の件?」
「いいえ。…………私事です」
「?」
アミィールは首をかしげる。
エンダーという女は悪魔とサキュバスのハーフだ。人間のことは些事だとおもっている節があり、わたくしに『私事』など言わない侍女です。
何かあったのでしょうか………?
考えているわたくしを他所に、アドラオテルが口を開いた。
「エンダーちゃん!俺とけっこんしてほしいってことでしょ?そうでしょ!?」
「違います」
「ええ~、うそだよね?」
アドラオテルはむう、と膨れる。
このもうすぐ2歳になるアドラオテルはとてもおませさんです。セオドア様も言っていましたが、女性が大好きで、誰彼構わず声を掛けて回ります。それを悪い事とは言いませんけれど、いい事なのかといわれると、わたくしにもわかりません。
「じゃーなあに?」
「それは、その___実は、明日の夜、立ち会ってもらいたいのです」
「立ち会う?何をですか?」
そう聞き返すと、いつも淡々と言葉を述べるエンダーが若干顔を赤らめました。………なんなんでしょう?
それを見ていたアドラオテルはさ、と顔から血の気を引かせた。
「え、エンダーちゃん、も、ももも、もしかして、お、男の子…………?」
「…………」
エンダーは顔をさらに赤らめました。そしてアドラオテルは顔を真っ青にしています。わたくしには全くわかりません。なんのお話をしているのでしょうか?
「エンダー、怒らないからちゃんと説明してちょうだい」
「……………レイ様と明日、いつも通り勝負をするのです。レイ様は2年かけてわたくしと勝負をしてきました。
そして___もう、わたくしでは勝てないと、悟ったのです」
「………!」
アミィールは目を見開く。
『勝負』___セオドア様からお聞きしています。交際をするために、2人は武術で勝負をしているのです。セオドア様の執事であるレイ様が勝ったら、エンダーはレイ様と付き合う、と。
しかしエンダーは恐ろしいほど強い。
わたくしの幼少期から背中を預けてきたとても強い護衛です。
その彼女がここまで言うとなると___レイ様は、とてもお強くなったということ。そして、エンダーがとうとう1人の生き物として幸せになるということ。
…………嬉しくないわけがありません。
「……………わかりました。わたくしもセオドア様に声をかけて、立ち会わせて頂きますわ」
「は、ありがたき幸せ」
「~ッ!」
「あっ、アド!」
アドはそれを聞くなりピコピコという不思議な音を立てる靴で走って執務室を出ていってしまった。急いで追いかけようとするが___居ない。
わたくしは急いで目を瞑り、城内を索敵する。わたくしの子供達がどこに居ても、わたくしが分かるようにしているのです。
アドラオテルは___セオドア様の自室に転移したようだ。
ほ、と胸を撫で下ろす。………けれども、セオドア様の負担を増やすのはよくないわ。
「…………エンダー、セオドア様の部屋にいるアドラオテルかセラフィールを連れてきてちょうだい」
「は」
エンダーはそれだけ言って歩き出した。……アドラオテルはどうしたのかしら?
アミィールはしばらく1人、首を傾げていた。
*作者から読者様へ~400話記念~
中途半端ではありますが、無事400話を迎えました。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価を頂きとても嬉しいです。
400話を迎えてやっと中盤かな?と言うところです。けれども、この先続編2本あるので、ほんの少し早足になると思われます。
この話での主人公はどう考え、どう動くのか。
皇女とイチャイチャしながら物語を加速させていきます。
子供達の視点も増えていきます。
子供達がどういうキャラなのか等も見ていただけると幸いです。
ブクマ、評価を頂けると更に頑張りますので、よろしくお願い致します。
楽しんで読んで頂けるように頑張ります。