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結局妻に甘い

 


 「………ッ、アミィ?」



 セオドアは片目を閉じて唇を受けながら、アミィールを見た。アミィールは眉を下げながらも、口元に笑みを浮かべていた。



 「セオ様、___セオ様が嫌なのは、わかっているつもりです。


 ですが…………セオ様のお美しい女装姿は、わたくし、大好きです。


 ごめんなさい、楽しみにしていて………」



 「え、…………」




 それは、初耳だった。

 俺の女装が、アミィール様を喜ばせているのか?この気持ち悪い姿が?



 「わたくしは胸を張って言えますわ。きっと初の『女装大会』で優勝するのはセオ様だと。


 だって、あんなに美しく可愛らしいのですもの」




 「_____ッ」




 アミィール様はそう言って手を合わせて笑った。うわぁぁぁご褒美、ご褒美だぁぁぁぁ、笑顔が、笑顔が可愛くてとても胸がときめく。女装してもいいんじゃないか?っていう感情が生まれる。単純か、俺。



 セオドアは胸を抑えながら言葉を紡ぐ。




 「けど、俺の女装なんて………」



 「そんなことありません。わたくしより美しいですもの。わたくしなど男装しか出来ませんし………


 セオ様が女装をするのでしたら、わたくしは男装しますわ」



 「う、………」


 セオドアは涙を拭きながら固まる。

 アミィール様の男装姿はとてつもなくみたい。だって王子様だもん、かっこいいんだもん。それを見るためには女装は必要不可欠なのだが。



 「どうか、わたくしに見せてくれませんか…………」



 「~ッ!」



 そう言って上目遣いで聞いてくるアミィール様。尊い、本当に子供達を産んだんだよな?全く見えないんだが?



 こんなこと言われたら___嫌でも頷いていてしまう。



 「…………わかった、私はやるよ」



 「やった!セオ様のお姿を拝見できるなんて!」



 アミィール様はパァ、と花が咲くように笑顔を零した。この笑顔のためなら女装どころか全裸にもなれる気になるから不思議である。



 セオドアもその笑顔に顔を綻ばせていると、ベッドの上で遊んでいたアドラオテルがこちらに向かってきた。



 「ママ!おれも、おれもじょそーするんだぞ!」



 「あら、そうなのですか?」



 「ああ、アルティア皇妃様がアドラオテルも、と」



 「それは素敵ですわ。わたくし、幸せすぎて死ぬのではないでしょうか………」



 「ふふ、アミィは大袈裟だよ」



 くらくらとするアミィールにセオドアは笑みを零して抱き寄せる。格好いいのに可愛いことを言っている奥さんの頬にちゅ、とキスをした。




 それを横目に子供達は話す。




 「セラ!俺は女の子になるんだぞ!凄いだろ!たくさんフリフリ着るんだ!」


 「着ればいいじゃない、アドが着たら気色悪い」


 「似合うはずだって?それほどでも~♪」




 アドラオテルはくねくねと動いてみせる。それをみてセラフィールははあ、と溜息ついてからぎゅ、とセオドアに抱き着いた。



 「どうしたんだい、セラ」



 「アドが女の子になるって……パパ、男の子なのに女の子になるのは普通なの?」



 「え、っと…………」



 セオドアの言葉は詰まる。純粋で悪意の無い言葉だ。けれど俺の心にもダメージがくる。




 固まるセオドアをみてくすくすと笑うアミィールは『そんなことないわ』とセラフィールを撫でる。




 「パパの女の子はとても、とても可愛らしいのです。ママもよく男の人の格好するでしょう?」



 「うん、けど、ママかっこいい」



 「ありがとう。うれしいわ」



 「わたくしもママみたいな格好したーい!パパ、ママと同じ服を作ってー!」




 「わわわっ」



 セオドアはセラフィールに揺らされる。小さい力なのだけれど、それでも赤ん坊の時と比べたら強い力だ。子供の成長を感じつつ、『いいよ』と優しく微笑んだのだった。







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