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悲しい事故

※若干BL要素を含みます。ご了承ください。

 








 そんなこんなで一週間はあっという間に経った。変装して街中を家族で歩いたり、フラン様にダーインスレイヴ様を差し出してイチャイチャさせて見せたり、ゼグスに子供たちを任せて夫婦で甘い時間を過ごしたり………初めての一週間休みは毎日が楽しかった。



 となると、こうなるわけで。




 「帰らない~!」



 「まだいる~!」



 「………………」



 「………………」






 案の定子供達は絶賛駄々こね中である。

 うん、予想はできていた。楽しかったもんな。俺も帰りたくない気持ちがあるよ。…………とはいえ、これ以上サクリファイス大帝国を空ける訳にはいかない。



 「アド、セラ、帰らないとなりません。ゼグス様もシヴァ様もお困りになりますわ」



『私は困らないよ?』



『俺はとても困るがな』




 おっとりと話すゼグスとアミィール様にボコボコにされ顔面を腫らしているシヴァ。これは擁護できない。俺は未だに許していないのだ。



 「ほらー!ゼグスじーじ、いいっていった!」



 「えるふのびじんとあそぶー!」



 子供達はキャンキャンと犬のように吠えている。ゼグスもゼグスである。断ってくれれば連れて帰れるのに、賢いセラフィールはその言葉を聞いて意地でも帰らないと首を振っている。



 アミィール様はじろり、とゼグスを見る。



 「ゼグス様、どうか子供達の為にも強く否定してくださいまし」



『ふむ、そうだなあ。そろそろ帰らせないとラフェエルが怒りそうだし………そうだ、セラ、私のプレゼントで手を引いてくれないかい?』



 「プレゼント?」




 「____!」




 嫌な予感。凄く、すごく嫌な予感がする。ゼグスは首を傾げる愛娘を抱き締めている。隣に立つアミィール様も首を傾げている。




 ____セラフィールを助けられるのは俺しかいない!



 そう結論づいたセオドアは走る。それはもう物凄い勢いで走りセラフィールを手に取った時____



 「んんっ!?」



『…………!?』




 いつもの絶望的な奇跡が起きてしまった。…………俺は、アミィール様の御先祖様とキスをしていたのだ。勿論例のごとく紫色の魔法陣が生まれて____腕に、契約印が刻まれた。




『………………』



 「……………」




 「せ、セオ様…………?」



 アミィールは戸惑いながら愛おしい御方の名前を呼ぶ。2人はとても顔が青い。ゼグスはぽつり、小さな声で言う。




『なんというか…………ごめん』



 「…………こちらこそ、申し訳ございません」



 「……………」



 「………………」



 「…………………」



 「きゃー!イケメン×美男子のキスよー!」




 沈黙の空間の中、フランただ1人が____鼻血を流し、興奮して声を上げていたのだった。



 * * *





 「ん、ふ……………」



 「は、………アミィ………っん」




 サクリファイス大帝国に帰ってきたセオドアとアミィールは子供たちを皇帝夫婦に預けて深く長くキスをしていた。


 先程のキスの上書きだ。

 完全な事故とはいえ、嫌なものは嫌だ。

 好きな人以外とキスをした罪悪感があったセオドアの唇を、アミィールが無理やり奪ったのだ。




 「っ、セオ、…………もう他の人とキス、しちゃダメ、ですよ?」



 「………セラフィールがキスされるのは嫌だったんだ」



 「わたくしだってセオがわたくし以外とキスするのは、嫌です」



 そう言って、セオドアの顔を撫でるアミィールは瞳を潤ませ、荒い息遣いだ。

 旅行中も沢山キスをしたけれど、やっぱり我が家がいちばん落ち着く。アミィール様の嫉妬が愛おしい。可愛すぎる。



 ____場所がどこでも、何時でも。


 ____この御方の隣で、この御方の唇を味わうのが落ち着くのだ。



 とはいえ……………こうして、妖精神や精霊達の力を得られるのは、ひいてはアミィール様や子供達を守るのに必要不可欠な気もしている。



 俺はどうすればいいんだろう……………。


 いや、今は考えるのをよそう。



 今はこの人に____触れていたい。




 「アミィ、…………愛している」



 「わたくしもです___セオ」



 2人は再び唇を重ねたのだった。










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