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主人公、皇妃に謁見する

 



 「………………うう……………」



 「セオ様、震えすぎですよ。誰も取って食べはしませんので、落ち着いて深呼吸をしてくださいまし」





 セオドアは震えていた。アミィールの言葉は耳に入っていない。


 何故なら____今、俺は…………玉座の間の扉の前に居るのだから。



 サクリファイス大帝国に来て三日目、俺はアミィール様のご両親に挨拶する時が来たのだ。普通なら、歓迎パーティなどが催され、そこで挨拶をするのだが……………何故か歓迎パーティは開かれないらしい。



 アミィール様は不機嫌_俺には普通に接してくれていたけれど、顔は険しかった_だったけれども、正直助かった。自分が大衆…………ましてやサクリファイス大帝国であれば沢山の人々に見られるだろう。幻滅されて、アミィール様の評価は下げたくなかったから、それはいい。



 だけど…………それでも緊張するというもの。この扉の向こうには、皇帝が居るんだぞ?もうこの扉が死への扉にしか見えない。




 「では、参りましょう」



 「あっ…………!」




 心の準備ができる前に、アミィール様の侍女・エンダーと俺の執事・レイが玉座の間を開けた。



 というかレイ!にやけてやがる!他人事だと思って………!





 開かれていく扉。その向こうには____





 「はぁーい!アミィーッ!」



 「わっ」




 扉が開いた直後、黒髪の女性がアミィール様に抱き着いた。一瞬のことで、何が起きたかわからなかった。



 けど、この女性が誰だかは、アミィール様の言葉でわかった。




 「突然飛びついてくるのはおやめください。



 ____お母様」



 「!」




 お母様……………!?

 その言葉を聞いて、すぐにアミィール様から離れた女性を見る。



 黒髪のストレートヘア、黄金色の瞳、黒いドレス_____言葉を失う程の美女。傾国の美女、という言葉が頭を過ぎるほどの、物凄く美人だ。最近語彙力が低下していってる気がする。


 アミィール様によく似た顔を、俺に向けた。



 「お、お初にお目にかかります!私はセオドア・ライド・オーファンと申します!…………はっ!」



 思わずその場で礼儀をした。本来なら玉座の間に入って尋ねられたら答えなければならないのに……大失態である。


 しかし、美女はそんなこと気にしないと言わんばかりにフレンドリーに手を掴んできた。



 「あ、噂の!セオドアくん!うわー!イケメンじゃない!ちょっとアミィ、とんでもないイケメンじゃない!アンタ見る目あるわ!」




 「…………お母様、セオドア様の御手を離してくださいませんか?手が滑って殺してしまいます」



 「手が滑って!殺す!どうやるのよそれ」



 そう言って楽しげに笑っている。………やはり親子なんだな、と思った。アミィール様も最初はこんな感じだった。……いや、口調が砕けている分お母様の方がフレンドリーか……




 「あ、とにかく中に入ってちょうだい、こんな所で話すのは行儀がよくないかもなので!」



 「話しかけたのは貴方じゃないですか……セオドア様、入りましょう」



 「は、はい………………」




 俺は気圧されながら、中に入った。






 * * *





 「では、改めまして。

 わたくしはアルティア=ワールド=サクリファイスです。


 サクリファイス大帝国にようこそ。セオドア・ライド・オーファンを心より歓迎いたしますわ」





 そう言ってにこやかに笑みを浮かべる皇妃様。やっぱりいくら見ても美しい。あのアミィール様の母親だもんな、美しくて当然………というか、子供を産んだようにはまったく見えない。スタイル崩れてない。



 下手すれば20代でもいける。いや、冗談ではなく。



 ……っと、それよりちゃんと話さなければ……




 「あ、ありがたき幸せ」




 「………………ふふ、そんなに畏まらないで。これから家族になるのですから」




 「そ、そんな、………私はまだ未熟なので、家族というのはとても嬉しいですが…………烏滸がましいです」





 本音である。受け入れてくれているのは嬉しいけれど、敷居が高すぎる……………


 もうこの場から逃げ出したい気持ちさえある小心者の俺をよそに、アミィール様は低い声で言った。





 「………………お母様、この国の皇帝はどこにいらっしゃるのでしょうか」











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