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国民は皆家族

 




 俺は見ていて楽しいが、子供達は暇らしく、忙しなく動いている。




 「ゼグスじーじとあそびたーい」



 「ふらんおねえちゃ~ん♪」




『ふふ、待っててね、いい子だから』




 「わわっ、アドくん揺らさないで~」



 子供達はきゃいきゃい騒いでいる。すっかりゼグスのことはお気に入りらしい。気持ちは分かる。ゼグスはとてもおっとりしていて優しい。乙女ゲーム『理想郷の王冠』の時から好きなキャラだったけれど、リアルは更にいいひと。



 最初は『アミィール様と恋愛フラグ?』と不安になっていたけれど、そんなことも無い。本当に親子のように関わっている。


 とりあえず………子供達を少し静かにしないと支障が出るな。


 そう考えたセオドアは2人に声をかける。


 「アド、セラ、パパと一緒に街にお出かけでも行こうか」



 「「えー」」



 「………………」



 …………父親というのは、切ない役割である。嫌われていないと分かっていてもこれは凹む。寂しい。涙も出るというもの。



 生まれた時から涙腺緩めのセオドアは若干涙を浮かべる。子供達に泣き脅しは効かないのだ。『またか』ぐらいに思われている。



 それを横で見ていたシヴァは余りにも哀れすぎるセオドアに助け舟を出す。



『あー、えっと、来てくれたらおじちゃんがいいものあげるよ』




 「わたくし、いらない」



 「おれほしー!」




 明らかに人見知りを発動しているセラフィールはツン、とそう言うが、『いいもの』という言葉に滅法弱いアドラオテルがこっちにきた。



 シヴァは抱き着いてきたアドラオテルを抱き上げ、セオドアに言う。



『1匹釣れただけでよしとしようぜ?』



 「1匹という呼び方はやめてください!私の息子ですよ!」



『細かいな。いいじゃねえかったく。


 ほれ、行こうぜ』



 「…………」



 セオドアはむすり、としながらシヴァの後を追った。





 * * *





 「おお~!きれ~!」



 「そうだな…………」



 シヴァに連れられてきたのは、城のいちばん高い部屋。国中が見渡せるくらい見晴らしがいい。その国も綺麗で思わず見とれる。




『だろ?俺のお気に入りだ。………この国はよ、俺とゼグスの宝箱なんだ』



 「宝箱?」



 駆け回るアドラオテルを見守りながら、シヴァは静かに言う。




『ここにいる亜人達はな、もうユートピアに居場所がない者たちばかりだ。人間に捕まり売られたり、痛めつけられたり、実験されたり………みんな何かしらの傷を持ち、ここに逃げるようにやってきた。


 ゼグスが人間だった頃から友でよ、あいつがサクリファイス大帝国の第一皇子、俺はヴァリアース大国の第二王子だった』



 「ええ!?シヴァ様は人間だったのですか!?そんな変態な格好をして!?」




『意外とお前、失礼な奴だな。これでも王子だったんだ。10万年前だがな。………友を見捨てられず、俺も精霊になることにした。精霊になるっつーことは、沢山の魔力を放出しなきゃならねえってえんで大変だけど、中々にやりがいがあってな。



 その片手間に亜人たちを集めて、家族のように暮らしてこうした国が出来た』





 シヴァはそう言って『馬鹿ばっかりだけどな』と明るく笑った。



 国が家族。………その言葉は、好きだ。

 国は政治とか、城とかじゃない。国民が国なのだ。…………それがわかったのは、紛れもなくサクリファイス大帝国で皇配になったから、だよな。





 セオドアはそこまで考えて、空を見上げた。星空がきらきらした結界壁はいくら見ても綺麗だった。



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