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心優しき先祖キャラ

 




 "その男"というのは____きっと、ゼグスの事だ。なにが、『子孫を見守れ』だ。


 怒りが胸に込み上げてきた。

 やっぱり、龍神なのだ。全ての事柄の中心には___必ず、龍神がいる。



 そして、この話の続きにもまた、居るんだ。




 「____!」




 不意に、周りの光景が変わった。

 先程の黒の内装ではない。沢山の____柱。そこに…………人が、埋まっていた。




 俺はそれを見て、吐き気を催した。急いで子供達の目を塞ぐ。こんなもの見せられない。…………見せてはいけない、そう思わせたんだ。



 ゼグスは悲しげに続ける。




『これは____"とある地"にて、未だに龍神に呪いをかけ続けている者達だ。



 命を差し出して、禁術を使い___その地から、呪いをかけ続けている。


 もうわかるだろう?…………この者たちは、私を助けようとして…………この呪いを使ったのだと』




 「……………ッ」




 目を背けたくなる現実だった。

 話で聞いていたよりもずっとショッキングだった。

 込み上げてきたのは、…………既に怒りではなくて。


 悲しみだけだった。




『____君の愛する人を傷つけているのは、私だ。私の至らなさ、なのだ』



 「____それは、違います」



『?』




 セオドアはぽつり、言葉を吐いた。

 ゼグスが人柱を消してから、子供達の目から手を離し、2人の頭を撫でた。




 「____貴方は、龍神と戦って、龍神を止めようとした。国民達は、あなたを助けようとした。龍神は___きっと、死にたくなかった。


 全部、一概に悪いとは言えないと思うのです。

 確かに、腹立たしいです。悔しいです。


 けどそれは貴方に抱く感情じゃない。人柱に抱く感情じゃない。



 …………何も出来ない私に、です。



 だから___どうか、涙をお拭き下さい」



『____ッあ』



 ゼグスは自分の目元に触れる。涙がいつの間にか出ていた。目の前にいるセオドアは………笑っていた。




 「もう、龍神はいません。ならば、私がどうにかする。どうにかすればどうにかなる。………私は、そう信じているのです。



 だって____アミィとずっと、子供達とずっと居たいから」




 そうだ。

 初代龍神は死んだのだ。

 もういない。下がるだけ下がればあとは上がるだけ。なんの難しいことは、ない。



 俺がどうにかする。どうにかすれば____アミィール様は、俺とずっと一緒に居られるんだ。




 セオドアは、泣いているゼグスを見ながら、子供達の背を押した。子供達は顔をあわせてから、ゼグスに駆け寄る。




 「いたいのなーない」



 「おとこならなくな!」



『………っ、はは、そう、だね。



 本当に___そうだね』




 子供達はゼグスの笑顔を見て、自分達も笑った。セオドアはそれを見てから、問うてみた。




 「しかし、ゼグス様は何故、成仏をなさらないのですか?初代龍神の縛りはなくなったのでは?」



『それは____うん、そうなんだけどね。元々はさ、ガーランドが約束を果たしてくれたからいつでも出来るんだけど……………ラフェエルとアルティアが気になってね。


 そうしたらアミィールが生まれて…………そのアミィールが君と子供を産み………楽しいことが増えてしまってね。



 私がいれば、寿命を調整できるだろう?だから、それにこじつけて居座っているんだ』



 「………………」





 おっとりとした口調でしょーもないことを言っているゼグス。いい雰囲気が台無しである。………とはいえ、今が楽しくて、それでいて子孫たちに手を貸す優しさに、小さく笑みが零れた。




 「………ふふっ、そうですか」




『ああ。これでも楽しいのだ。


 なあ、アドラオテル、セラフィール』




 「たのしー!」



 「たのしー!」



 子供達は撫でられると、万歳して反芻した。それはどう見たっておじいちゃんと孫達の姿だった。










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