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人狼側近と変態精霊

 





『やめておくれよ。せっかく来たのに喧嘩なんてさせたくない。シヴァも少しは黙っていろ』



『ハンッ!ゼグスは甘いぜ、まったく』



 「…………」



 シヴァという精霊に出会ったのは初めてだけど、ゼグスとの掛け合いを見て、城に置いてきたレイのことを思い出す。つまり、2人は友達なのか?そんな、馴れ馴れしさを感じて……俺も、レイに会いたくなった。





『まあ、話したいことは沢山あるしやらなければならないことは沢山あるけれど、今日は疲れただろう?


 魔力の件は明日やろう。今日は存分に休んでくれ。部屋は好きなところを使っていい』



 「ありがたき幸せ」



 アミィール様は綺麗にお辞儀をする。俺よりも男らしい振る舞いである。俺などはなよなよしてつられるようにお辞儀をすることしかできない。



 フラン様は『私はいい部屋確保してくるー!』と言ってさっさと玉座の間を出ていってしまった。俺も後を追いかけようとしたけれど、ある会話が耳に入って、足を止めた。




『よお!我が子孫、ガロ~!』



 「わ、………シヴァ様」



『シヴァ様、なんて堅苦しい呼び方はやめておくれ、可愛いガロ~歳を追うに連れてユミルに似てきたな~!可愛い可愛い俺の子孫~!』



 そう言ってデロデロにガロを甘やかすシヴァ。………子孫、って。



 セオドアは思わず声をかけてしまう。





 「あの、ガロ様。その御方は精霊、ですよね……?」



 「ええ、そうです。氷の精霊・シヴァ様。………けれど、私の先祖でもあるのです」



 「………!では、ガロ様も……」



『そーゆーこった!』



 「うわっ」



 ガロと話していると後ろから重いものがのしかかった。アドラオテルを抱いている手に力を入れて体勢を整える。しかし、シヴァ様は口を閉じなかった。




『ガロは精霊の血を引いている人狼なんだ。この、俺の血をよ!』



 「……………」



 そう言ってにか、と笑うシヴァ。無駄にかっこいい。無駄に。漢!って感じの人である。



『漢なんて、褒めるなよぉ~!まあでも、力としてはお前のその息子に劣るよ』



 「え?」



 セオドアは突然の言葉に首を傾げた。『鈍いなあ』と呑気に言いながら続ける。



『精霊よりも龍神の方が上位なんだよ。それだけじゃねえ。全部の屈服印を集めた龍神だ。弱いわけがない』



 「屈服印………?」




 「セオ様」


 混乱する。今日の俺は混乱してばかりだ。格好悪い。くらくらと目眩がする中、アミィール様が俺を呼んだ。




 「どうしたんだい、アミィ」



 「えっと、子供達をもう少しゼグス様に見せたいので、こちらに」



 「わかった」



 セオドアはアドラオテルを抱いて、セラフィールと共にゼグスの前に連れてくる。セラフィールはびくびくと怯えている。アドラオテルはアドラオテルだ。


 「だ、だあれ?」



 「おっす!おれアド!」




『ふふふ、個性的な子供達だ。我が血統も残っている。………いつ会っても嬉しいな、我が子孫とは』



 そう言って、ゼグスは子供たちの頭を優しく撫でた。




 星の妖精神・ゼグス。

 乙女ゲーム『理想郷の王冠』での彼のストーリーはこうだ。

 神に『子孫達を見守れ』と命令をされ、死ぬことを許されない哀れな神。しかし、ヒロインに出会い、その傷を癒して………成仏をする。悲恋系のストーリー。思い出しても泣ける。




 「………セオ様?」



 「っ、なんでも、なんでもない………っ」




 セオドアは滲みそうになる涙を必死に抑えた。………ダーインスレイヴ様もクリスティド国王陛下も、『幸せの形』を手に入れていた。



 ____この人は、どうなのだろう。




 そう、思ったんだ。







※ご案内


人狼側近と氷の精霊の関係は前作をご覧下さい。

次話から少し前作の内容が少し続きます。ご了承ください。

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