表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

382/470

気分はメリーゴーランド

 




 不意に、歩いていたうさぎの獣人が野太い声でそう叫んだ。すると街ゆく亜人達が一斉にこちらを向いた。



 「隣にいらっしゃるのは龍神様の末裔のアミィール様では!?」



 「おい!その隣にいる人間に抱かれた女の子も龍神の瞳だぞ!」



 「きゃーっ!噂は本当でしたのね!?龍神様の末裔のアミィール様が人間と結婚し双子をご出産になられたというのは!」




 「え!?え!?え!?え!?」





 ドドドドド、と国民達らしき亜人が詰め寄ってきた。一気に騒がしくなる広間にフランがはあ、と溜息をついた。




 「あーあ、見つかっちゃった~。またこれかあ。だからゼグス様の城にひとっ飛びすればよかったのよ、アミィールちゃん」



 「ですが……セオドア様に街を見て欲しくて……」



 「ど、どういうことなんだい?アミィ……!」



 「___この国は、龍神やサクリファイス大帝国の第1皇太子に優しい街なのです。この国の王の1人であるゼグス様はわたくしのご先祖、そして龍神とは古くから関わってきた……また、20年ほど前、フラン様やお父様、お母様達旅の一行がこの国を救ったので___この国では、わたくし達は『英雄の子供』なのです」




 「……………………」



 そうだったのか……俺は何も知らないで浮かれて来たけれど、これは確かに憂鬱になる。けど、俺の為に街に寄ってくれたのは純粋に嬉しい。おかげで素敵なものを見れたからそれはいいんだけど……



 「この人間、珍しい匂いがしますわ!」



 「さすが龍神様の選んだ御方ですわ!」



 「うう………」




 馬と虎の獣人が物凄く匂いを嗅いでくる……セラフィールはかたかた震えているぞ……俺もついでに震えている……ここから動けなくないか?俺達……




 _____この後、ガロがユニコーンの馬車の手配をして戻ってきた時、『人狼様だ!』とまた1層騒がれ、俺達が馬車に乗れたのはこれから3時間後だった。




 * * *






 「きゃーッ!」



 「スゲーッ!」




 子供達は目をきらきらさせながら外を見ている。俺も声をまた失っていた。俺達は___ユニコーンの馬車に乗っているのだ。空を飛ぶユニコーンの馬車。当たり前だけどメリーゴーランドよりも迫力があって俺もはしゃいでしまう。



 「アミィ、見てくれ!私達は飛んでいるぞ!凄い!」



 「ふふ、セオ様と子供達が同じ顔をしていますわ」



 「う、…………」



 1歳半の子供たちと共にはしゃぐ20歳…………でも仕方ないじゃないか。こんなの乙女的にはご褒美でしかない。アルティア皇妃様は常々『なんでもありな世界だ』というけれど、本当にそうだと思った。



 そんなセオドアの向かいに座っているガロもくすくすと笑った。




 「20年前のフランさんとアルさんのようですね」



 「わかる。わかるわセオドアくん。乙女的にこれは美味しいわよね。リアルユニコーンにリアル馬車よ。夢の国よりも燃える」



 「そうなんですよ!本当に夢の国のネズミよりも燃えます!メリーゴーランドの100倍楽しいです!」



 「ネズミ?ゆめのくに?めりーごーらんど…………?」



 ___アミィールはフランとセオドアが熱く語っているのを見て嫉妬し、セオドアとキスをするまで、あと5分。




 * * *




 「……………………」




 ユニコーンの馬車は楽しかった。すごく幸せだった。それは認める。フラン様と語り合ってからのアミィール様のキスも嬉しかった。子供達には冷めた目で見られたけどなんでもいい。だがしかし。




 セオドアはカタカタと震えながら目の前を見た。____全部が黒い、大きな城。なんというか、幻想的な銀世界観を壊しているような城だな、悪趣味だなと思った。



 というか。




 「………………誰もいない…………?」



 出迎える従者の姿が無いのだ。普通城に立ち寄る時は沢山の従者が出迎える。けれども、誰一人居ない。…………寂しい城だと思った。



 「セオ様、行きましょう」



 「アミィ、勝手に入っていいのかい?」



 「ええ。…………この城自体が聖域、普通の人間は入ってはならないのです」



 「それでは、私も入っては…………む」



 その言葉を言う前に、アミィール様の人差し指が俺の唇に触れた。そして、アミィール様は挑発的に笑った。



 「___セオ様は、わたくしの旦那ですわ。セオ様ほど清らかな人が入れなくて何が聖域ですか」



 「___っ」




 その言葉に、顔の熱が上昇する。

 本当に、ずるい。俺がドキドキさせる前にアミィール様が俺をドキドキさせる。ズルすぎる。キスしたいと思う自分が情けない。



 「ふふ、………では、入りましょう。


 ガロ、お願い致します」



 「は。………………星の妖精神・ゼグス様、氷の精霊・シヴァ様。我らが訪問をお許しください」



 「____!」



 ガロがそう言うと、城がひとりでに開いた。そして、アルティア皇妃様がいつも出すような黒渦が広がっている。それがとても禍々しく感じた。しかし、元気な子供達は『きゃー』なんて言いながら走り出す。



 「アド!セラ!」




 「パパ、先に行くー!」



 「早く来てよー!」



 それだけ言い残して入っていった子供達。勿論放って置くことなどできない。セオドアも急いで黒渦に入った。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ