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家族旅行初日から心が折れる

 





 「家族旅行したい気持ちもわかるけどさ、魔力を渡すには聖なる力が必要なのよね~。で、この聖女もどきがついて行かないといけないのよ」



 「もどきなんて失礼なッ!先輩失礼なッ!」



 ぎゃん、と吠えるフランを他所に、セオドアはちらり、アミィールを見る。セラフィールを抱いたアミィールは更に眉を下げた。



 「………………こういうことなのです」




 「………………」



 「パパ、お口があいてるよ」


 初の家族旅行計画にヒビが入ったのを感じてセオドアは持っていた沢山の荷物を落とす。そして、抱えている息子の手が口に入ってくるまで放心状態だった。





 * * *



 「わあ…………」



 「ほおお~!」



 「きれ~!」




 セオドア、セラフィール、アドラオテルは感嘆の声を漏らしていた。



 目の前には___黒い大きな結界。ドーム状の天井からホロホロと白い雪が降っていて、その雪がキラキラと光っているのだ。さながらスノードームのようである。乙女心はもちろん擽られる。スノードームにはいるなんて夢しかない。素敵すぎる。




 「ふふ、セオ様も子供達も驚いていますね」


 「驚くよ、こんなに素晴らしい結界初めて見た。すごいな、とても……!」


 「本当はすぐに入っても良かったのですけれど、これを見て欲しくて寄り道しました」



 「___ッ」



 そう言って悪戯っぽく笑うアミィール様がスノードームと相俟って美しい。この愛おしい御方の背景は全て美しくなるのだから凄い。もう結婚5年目だぞ俺?いつ慣れるんだ俺?



 これを背景にキスがしたい。しかし我慢だ、子供達が居る!………それに。



 セオドアは絶望しきった顔で後ろを見る。そこには_____フランと銀髪のベリーベリーショートヘア、赤と金の瞳のガロの姿が。




 「ふっふーん!感動するでしょこれ!セアちゃんの心は踊ってるんではない~?乙女だもんねえ」



 「ふふ、そうでございますね、フランさん」



 …………台無しである。セオドアは肩を落として溜息をついた。

 まだガロはいい。ガロはどうやら此処に親族が居るらしく、会いたいからとついてきたのだ。それはいいよ、ガロには感謝しているし。だがしかしフラン様、貴方はダメだ。



 だって絶対情緒もいい雰囲気もぶち壊すトラブルメーカーだもの。初家族旅行で何故この人と一緒にこの素敵な場所に来なければ…………アミィール様の為とはいえ、心が重い。





 「…………セオ様、大丈夫でしょうか?顔色が………」



 「…………ッ!」



 そんなことを思っていたらそ、と流れる手つきで俺の頬を持ち心配そうに見上げてきた。それだけで顔が火照る。


 ほらもー男前!俺よりも男前!2児の父親になっても男前力では勝てない!この人が強すぎる!



 セオドアは急いで言葉を紡ぐ。



 「だ、だだだ、だいじょ__「せら!早く入ろうぜ!」それより、アミィ、綺麗「あーっ、待ってよあど!」……………」



 新婚旅行との違い、その2。子供が居ること。子供達は俺が作ったピコピコと音が鳴る靴を履いてたどたどしい足取りで走っている。いい雰囲気を堪能するよりも転ばないかの方が心配でハラハラしてしまう。



 「セラ、アド、走ってはなりませんよ。怪我をしてしまいます」



 「はーい!」


 「いーじゃーん」



 元気な返事と生意気な口調。双子でこんなにも性格が違うものなのか………?



 「セオ様、子供達もこう言ってますし、中に入りましょう」



 「…………ああ」




 家族旅行をゆっくり満喫できない気しかしない…………それより。




 「この街にはどうやって入るんだい?」



 「この街に入るにはねー、ガロちゃんの力が必要なの!」



 「へ?」













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