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誓いの印

 




 「…………………はぁ」




 セオドアは豪華で煌びやかな柔らかいソファに身を沈めていた。


 ……………俺達は、丁度1ヶ月経った所でサクリファイス大帝国・サクリファイス皇城に着いた。沢山の従者、兵士に出迎えられ、その全ての人が大きく、屈強な身体に怯えていたらどっ、と疲れた。





 馬車の旅が長かったせいだ、と自分に言い訳をする。怖いなんて言ってたらアミィール様の皇配への道が遠ざかってしまう。強くならねば………………





 「セオ様、お疲れ様です」




 「……………アミィ」



 そんな事を思っていたら、兵士達に絡まれていたアミィール様が戻ってこられた。すぐに俺の近くに来て、隣に座る。





 「申し訳ございません、城の者と久しく会うので会話に華を咲かせてしまいました」



 「いや、大丈夫で…………大丈夫だ。気軽に兵士が皇女に話せるのは凄いな」



 「ふふ、皇帝にバレたら怒られちゃいますけど」



 そう言って楽しそうに笑うアミィール様。

 …………自分が龍神だ、という話はあれからしていない。そりゃあ、気になるけれど……………あんなに泣くほど彼女を蝕んでいるんだ。それを無闇に聞き出すのは、よくない。




 アミィール様が話したくなった時に、ちゃんと聞けばいいんだ。




 「…………とりあえず、わたくしの両親と会うのは明日以降です。今日はゆっくり休みましょう。何かあれば、わたくしの名前を呼んでいただければすぐに駆けつけますので」




 「ありがとうござい………あ、ありがとう」





 「…………ふふ、セオ様の敬語は中々抜けませんね、またキスをしますか?」




 「ッ、そ、それは………………」




 嫌だ、なんて言えるわけがない。

 キスをしたい。もっと触れていたい。

 ………だけど、自分からキスなど出来ない。あの時は出来たのだから、とは思うけれど、あれ以降何度試しても出来なかった。やはり俺にはハードルが高いらしい。




 もじもじするセオドア。その姿を見て、アミィールはいつものように優しく両手でセオドアの顔を持ち上げ、唇を重ねた。




 大好きな唇。ちょっと硬いのに、温かい。触れているとモジモジしていた内向的な愛おしい婚約者は積極的になっていく。



 貪るような、全ての唾液を吸い尽くすような勢いで深く、甘く絡み合う。そのまま、セオドアは柔らかすぎるソファにアミィールを押し倒して、再び唇を重ねる。




 これ以上はだめだ、と分かっていても理性が仕事をしない。このどこも甘い人の全てを味わいたい気持ちに襲われる。



 でもそれをぐっ、と抑えて唇を離した。

 銀の糸を引いて離れていく唇に、少し残念そうにするアミィール。………その顔は本当に狡いと思う。




 「はあっ…………セオ、さま………やめてしまわれるのですか…………?」



 「…………アミィ、お願いだからそんな顔をしないでくれ…………」



 「…………へへ、セオ様の切なそうな顔、大好きです。


 1年……………か」




 アミィールは少し身体を起こして、セオドアの首筋に吸い付く。ちょっと吸い付けただけで簡単に咲く紅い痕。…………でも。





 「………………長いなぁ」




 「…………?なにが?」




 「わたくし____早く、セオ様と夫婦になりたいです。



 セオ様を、今以上に愛したいですもの」




 「……………っ!」





 顔の温度が上昇していく。

 本当にこの御方は……なんでそんなイケメン王子みたいな事をサラリと言えるんだ……?それを言ったら、俺だってもっと……触れたいし、それ以上だって……




 「ねえ、セオ様、わたくしに誓いの印をくださらない?」



 「誓い?何を………?」




 アミィールは自分の首筋をセオドアに向けた。そして、意地悪く言う。




 「ここに、貴方のものだという痕を、わたくしにくださらない?」




 「なっ、………そ、それは不敬「わたくしたちは、婚約者です」………っ、ですが、ドレスを着たら「男装するので大丈夫です」…………」




 どうやら、強制らしい。多分するまで言い続けるだろう。………それに、俺の痕をつけて欲しいと言うアミィール様が愛おしすぎる。





 「アミィ、アミィのこ、婚約者として……………私は尽力する」




 「んっ…………」





 俺は、アミィール様の首筋に自分のものだという印をつけた。可愛い我儘は、まるで俺へのプレゼントのようにも思えた。

















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