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お酒の力で本音爆発 #2

 




 「俺の子供達もそうです!俺達はもう生贄なんて縛りはないのでしょう?傷は深いかもしれない、思い出したくないのかもしれない!けど、それはっ!…………過去の事です…………」




 セオドアはそこまで言って、その場に泣き崩れた。けれども言葉を紡ぐのはやめなかった。




 「過去に縛られ、今の幸せを、享受出来ないのは悲しいです…………俺は、アミィール様、子供達は勿論、ラフェエル皇帝様も大好きです…………その人たちの誕生を祝いたい……、みんなに祝って欲しい………だって!2人はこの国でッ………1番国を想っているじゃないですか………この素晴らしいサクリファイス大帝国があるのは………土台に2人が居るからじゃないですか………



 誕生日くらい、みんなに祝って欲しい。だって、………国民たちは、俺たちの家族じゃないですか!」




 セオドアはそう言って、立ち上がる。

 その顔は___とても真剣だった。



 それを見たアミィールは思う。

 …………セオドア様は酔うと本音を吐き出します。だから、この言葉は本当に心の底から思っていることなのです。嬉しくないわけはございません。


 けれど、この式典は………わたくし達家族にとって、重いもので…………。



 ____重い?重いってなんでしょう?

 セオドア様の言う通り、遠い過去のこと。もう龍神はいない。生贄も必要ない。




 ____ただ、誕生日を受け入れていいのでしょうか。

 わたくしの手は『穢れている』。たくさんの命を屠ってきた。救った命よりも、奪った命の方がきっと多い。


 わたくしは人殺し。お父様も人殺し。そんなわたくし達が____「いんでないの?」………!


 そんなことを考えていると、呑気な声がした。声の主は___意地汚く骨付き肉を手で持ちかじっているお母様。お母様はぺろ、と口元のソースを舐めて言う。



 「セオくんの言う通りだわ。………毎年、国民たちが『式典をして欲しい』って言っている。


 過去の事はあるわ。忘れてはいけないことだというのもわかっている。


 けど、20年前よ?振り返っても___遠いじゃない」



 「アル………お前、自分の言っていることがわかっているのか?」



 「ええ。でも、それ以上に、1人の父親として、1人の皇族として、……1人の夫として、息子として勇気を振り絞って言った言葉を無下にするのは、よくないわ」



 アルティアはそう言って、ナフキンで手を拭いてから、泣いているセオドアの頭を撫でた。



 「私はこの子と同じ意見。……ラフェー、貴方はわかるんじゃない?しきたりや束縛するものを壊してきたじゃない、私達。


 そろそろ__自分の戒めを解くべきよ」



 「…………お母様」



 アミィールが母親を呼ぶと、母親は溌剌とした笑顔で言った。



 「___私は、夫や娘、子供達を心の底から祝いたいの。セオくんと同じで、『国民たち祝え!』っていいたい!」



 「…………アルティア皇妃様」



 「あらやだ酷い顔。………アミィール、子供達は今日私達が見るわ。セオくんを寝室に連れてっちゃいなさい」




 「____はい」


 「わっ」


 アミィールはそう短く返事をして、立てないでいるセオドアを姫抱きした。久しぶりに抱き上げたセオドア様は__重くなっていた。



 * * *



 どうやら俺は父親になっても乙女らしい。

 アミィール様に姫抱きをされながらぼんやりと思う。最近、少しずつお酒を飲んでいるから思ったほど酔っ払っていない。



 むしろ、爆弾発言、暴言に近い言葉を発したから恐怖で寒いくらいだ。我ながら情けない。



 そんなことを思っていると、あっという間に寝室に来た。アミィール様は俺の体をベッドに下ろして、覆い被さるようにして、俺を熱の篭った視線で見下ろした。



 「____セオ様、わたくし、本当に…………祝われても、いいのでしょうか」


 「…………え?」










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