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兄夫婦、来城

 





 「も、申し訳ない、アミィ、もし邪魔ならば追い出してくれて構わない。俺が追い出すから……」




 セオドアはその場で頭を下げる。アミィールは片手で布団を抑えながら言葉を紡ぐ。



 「セオ様、謝らないでくださいまし。お兄様は家族なのですから、突然でもわたくし達は問題ございませんわ。


 それよりも、お兄様とお姉様は御子が出来ていて、わたくしの出産の際もお見えにならなかったですし、わたくし達もバタバタしていて伺うことが出来なかったので、わたくしは嬉しいですわ」




 「アミィ…………」




 聖母だ……ここに聖母がいる………

 こんな突然の訪問普通許されない。近所の友達の家に『遊びに行こうぜ!』のノリで来ていい場所じゃないのに怒りもしないとは……



 それに、ラフェエル皇帝様もアルティア皇妃様も喜んで応じるだろう。本当に恵まれている。皇族なのに皇族らしくないのがこの家の素晴らしい所である。



 そんなことを考えるセオドアを他所に、アミィールは目を輝かせて言う。



 「それに、セラとアドの従兄弟になる赤ちゃんをわたくしも見たいのです。仲良くできるのでしょうか、お兄様もお姉様もお美しいので、きっと御子も可愛いでしょう、嗚呼、早くお会いしたいですわ……!」




 ……アミィール様は子供達を産んでから、子供が目に見えて好きになった。ヨウを預かった時はあんなに泣いていたのに、……いい変化である。血ではなく命に触れるという行為はとても素晴らしいことなのだな、と実感させられる。




 ____けれど、今は。



 「……………アミィ」




 「?セオ___っん」





 セオドアは手紙を置いて押し倒すように唇を重ねた。冷めた熱を甦らせるように舌を絡めながら体に触れる。アミィールは呼吸が上手くできず甘い吐息を苦しげに漏らしながら、セオドアの触れる手に合わせて身体を跳ねさせる。



 唇を離した時には___さっきよりも乱れ、身体は熱くなっていた。セオドアは涙を流し、唾液で口元を濡らす愛おしい女を熱い視線で見下ろしながら___言った。



 「____この時間だけは、俺以外のことを、考えないで?」



 「ッ、は…………セオ、様…………」




 「セオ様じゃない、セオと呼んでおくれ____」



 セオドアはそう言って、アミィールの細く長い指に自分の指を絡ませながら愛おしい女を夜通しで愛したのだった。




 * * *



 「セオー!」



 「あ、兄上………!」




 手紙が来て2日後、本当に兄上は来た。そして来るなり前のように抱き着いてきて、髪の毛をぐちゃぐちゃと撫で回す。



 「兄上!やめてください!他の者に示しがつきません!」



 「いいじゃないか、お前は皇配の責務を全うしたんだろう?………子作りという、な」



 「~ッ!兄上!」



 セフィアは顔を赤く染めあげギャン、と吠えるセオドアを放って、近くにいたサーシャを見る。




 「サーシャ、挨拶」



 「は、はい、ご、ごきげんよう………」



 「ごきげんよう、お姉様」




 自信なさげに頭を下げるサーシャに、近くにいたアミィールは笑顔で挨拶をする。………ふふん、やはり俺の奥さんの方が凛々しいな。



 「得意気な顔をしてるんじゃないよ、お前は」




 「あたっ!」




 セフィアはセオドアの頭を殴った。痛い。手を上げるなんて………あ。



 ふと、目に入った。サーシャの腕には___群青色の髪で緑瞳の赤ん坊が居た。不思議そうに見ている。その視線の先には___アミィール様が抱いている、群青髪の紅と黄金の瞳の息子、アドラオテルと紅銀の髪の黄金と緑の瞳の娘、セラフィールの姿が。




 そうだよ、こんな風に絡んでいる場合じゃないんだ。



 そう思ったセオドアは兄の腕から離れて子供達を紹介する。




 「兄上、私の息子と娘です。

 名前は___「アドラオテルとセラフィール、だろう」…………言わせてくださいよ」



 セオドアは口を尖らせる。兄はつまらなそうに『ここで紹介することないじゃないか』なんて言って自分も子供の近くに来て言った。














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