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バイタリティが半端ない

 





 「まあ……………こんなに……………」



 夜、執務から戻ってきたアミィールは両手に沢山の紙を持っていた。それはどれも美しく可愛い子供達が描かれている。アミィールが感嘆の声を漏らしていると、セオドアは頭をかいて顔を赤らめた。



 「が、頑張ったけど………どうしても、子供達の可愛さを表現出来なくて………」



 「いいえ、とてもすごいですわ。セオ様は絵もお描きになるのですね…………」




 新しい夫の一面に、アミィールは笑みを漏らす。

 …………この愛おしい御方は本当になんでも出来てしまう。子供達の椅子も、玩具も、服も、絵まで全部この御方お手製なのです。


 わたくしよりもセオドア様の方がお母さんらしくて………すこし凹んでしまいます。



 「………?どうしたんだい?やっぱり、下手だったかい?」



 アミィールの顔が暗いことに気づいたセオドアは慌てて言葉を紡ぐ。アミィールは『そうではなく』と首を降って、目を伏せながら言う。




 「…………わたくしより、セオ様の方がお母さんらしいな、と。


 わたくしなど何もしてないような気がして…………」



 「そんなことないよ、アミィ」



 セオドアはその言葉を聞いて、今にも泣きそうなアミィールを優しく抱き締める。そして、諭すように言葉を紡いだ。



 「私はアミィのように子供達を叱れない。…………アミィの方が父親らしいと思うことはあるよ。



 けど。



 私たち………いや、俺達夫婦はそれでいいとも思うんだ。『普通』とか『常識』とかそんなのどうでもいい。



 俺達らしい育て方で、この子達を育てていこう?」




 「…………セオ様…………」





 セオドア様はそう言ってふわり、と優しく笑った。



 _____嗚呼、常々思います。

 わたくしが愛した御方がこの人でよかった、と。


 この御方でなければわたくしはきっと母親になどなれなかった。



 …………この御方が傍に居なければ、わたくしはきっと今でも人を殺すことしかできなかっただろう、と。




 アミィールはそこまで考えて、セオドアの腕の中で顔を上げた。涙が滲んだ黄金色の瞳を細めて、言う。




 「セオ様、わたくし____貴方を心の底から愛しております」



 「ああ、俺も____貴方しか愛せません」



 2人はどちらとも言わずに唇を交わす。子供達が見ているから深いのは寝るまでお預け。我慢するのは苦手だけれど、子供達やこの人の為なら我慢も苦ではない。けれど、少し長めにしちゃうのは許して欲しい。



 そんなことを思いながら唇を離す。そして、もっとしたい気持ちを抑えて、セオドアは聞いた。



 「アミィ、この絵のどれがいいと思う?」



 「どれだなんて………どれも素敵で選べませんわ。全てわたくしは好きです」



 「そうか、やはり……………全てを配るか」




 「え?」




 アミィールは目を見開く。

 配る?これを?


 戸惑うアミィールにセオドアは『伝えてなかったね』と明るい声で言って1枚の肖像画を手に取る。



 「この絵とケーキを国民に配ろうと思うんだ。子供達の自慢をしようとね」



 「…………………」




 ………………セオドア様は子供達が生まれてから本当に、なんというか、変わりました。嫌な変化ではないけれど、………やりすぎな気は、します。


 とはいえ、こんなに楽しそうにしている愛する御人のやることを止めていいのでしょうか?そもそもわたくしはこの笑顔を壊せるのでしょうか………?



 再び考え始めるアミィールをよそに、セオドアは『こっちも力作だけど、こっちも………』と嬉々として語る。



 向かいに座っている子供達は父親の投げっぱなしにしていたクレヨンで描きかけの肖像画に落書きをしながら意思疎通をする。




『ママ、すごく困ってるわ。止めた方がいいのかしら………?』



『ほっときなよ、パパはあーなったら止まらないだろう?きっといくらママが止めても聞かないよ。面倒な人だな~』




『男の人ってみんなああなの?アド』



『俺はああはならないよ、絶対』



 アドラオテルはそこまで意思疎通してハンッ!と大きく鼻を鳴らした。












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