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Tell me 『パパ』!

 



 「アド、セラ、君たちはどうして皇帝夫婦様たちの部屋から抜け出したんだ。ガロ様とリーブ様を気絶させ、兵士たちにまで手を加えて…………だいたい、朝早くなにを……………」



 「…………」


 「…………」



 服を着たセオドアは顔を真っ赤にしながら、子供たちにこんこんと小言を言う。子供達は座りながら下を向いている。そして、意思疎通をしている。



『…………アド、サイテー。わたくしを置いて1人だけ逃げるなんて、サイテーすぎるわ』


『サイテーなのは俺の気分だよ、なにが悲しくてパパとキスせにゃいかないのか………俺の純情が穢れた………もうお嫁にいけないよ…………』



『男はお嫁にいかないのよ、サイテー』



『サイテーサイテーいうな!』



 「アド!セラ!聞いているのか!」



 「うぐぅ………」


 「ひうっ………」


 父親の大声にびく、とする。

 驚いた2人はぷるぷると震えた。



 ___ただ、パパとママに会いたかっただけなのに。


 ___何でこんなに怒られなきゃいけないんだ。


 そう言えない子供達は涙を流す。

 それを見たセオドアはハッ、と我に返って……子供達をまとめて抱き締めた。そして、さっきとは打って変わって優しい声で言う。




 「怒鳴ってごめんね、2人とも。……でも、心配だったんだ。勝手に出歩いて怪我をしたら、みんな、みんな傷つくんだよ。君たちだって傷つくんだ。


 ____だから、今度からそういうことしちゃ、いけないよ」



 「ぱ、ぱ、……」



 「……………ぱ、ぱ」



 「____!」




 セオドアは、言葉を失って目を見開いた。

 今、アドもパパって言わなかったか!?

 セラフィールは偶に、極たまにパパと呼ぶけれど、アドラオテルは初めてで。

 急いで2人を引き離して見た。



 黄金と緑、紅と黄金の瞳から大粒の涙を流しながら俺を見ている。そして、再び口を開いた。



 「「ぱぱ!」」



 「____ッ、ああ、…………」




 今度は、セオドアが泣いた。

 パパと呼ばれたんだ、俺は。

 こんなに怒って、怒鳴ったのに。


 この子達は____俺をパパと、言ってくれたんだ。



 子供達より泣きじゃくるセオドアを、見ていたアミィールは優しく背を撫でる。そして、子供達を見た。




 「パパ、喜んでますよ。けれど、セラ、アド、勝手に出歩いてはなりませんよ?」



 「………ま、ま」


 「まま、………」



 「ふふ、ママですよ。ママは怒ってるんですから、後でゆっくりわたくしのお話も聞いてくださいね」



 「…………」


 「…………」


 


 父親のように甘くない母親に、涙が引っ込んだ子供達でした。




 * * *



 「パパ!」



 「ふふ、なんだいアド」



 初めてパパと呼ばれて数時間、アドラオテルは頻繁に俺を呼んだ。可愛くてにやけてしまう。アドラオテルを優しく抱き上げると、じっ、と俺の首筋を見ている。




 「どうしたんだい?アド」



 「パパ、こえ、なあに?」


 「……!こ、言葉まで喋れるように……!」



 「こえ、なあに?」




 感動しているセオドアをよそに、何度もこえ、といって指さすアドラオテル。これ、って………?



 セオドアは近くに置いてあったアミィールの鏡を手に取って見た。首筋には___アミィール様がつけて下さった紅い痕。アドラオテルはそれを指さして何度も聞く。





 「こえ、なあに?」



 「__ッ、そ、それはだね、えっと、……」



 顔を赤らめ言い吃るセオドア。埒が明かないと思ったのか、アドラオテルは部屋にいるレイに声をかけた。




 「れー、こえ、なあに?」



 「おお、俺の名前まで呼んだか……と、どれどれ……!


 っ、ぶふぉ!」



 レイはセオドアの首筋を見て思わず吹き出した。セオドアは真っ赤な顔で怒鳴った。



 「笑い事じゃないぞ!レイ!」



 「いやだって、なあ、………アドラオテル様、他になにか気になることはございませんか?」



 「あね、えと、べと、べたべた、かひかひ、パパ、はぢゃかだた」



 「………………」




 「ぐはあっ!」











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