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早朝の冒険 #2

 




『こっちだよな?』



『ちがうよ、こっちだよ』




 2人は長く広い廊下の突き当たりでそんなことを意思疎通する。もちろん、セラフィールの頭の良さを知っているアドラオテルは『そっか』と言いながら先へどんどん進む。とても広いのだが、2人はここで育ってきたから違和感なんて覚えない。これが『普通』なのだ。



『やっぱり朝早く起きたら侍女がいないな~。まあ、いてもあの意地悪パパのせいでスカート覗いても味気なくなったけど』



『それを言うなら色気でしょ?………というか、女性のスカートの中に入るなんてサイテーよ』


『いいじゃん、減るものじゃないし。セラのオムツを見るより面白い』



『サイテー』



 …………このとおり、2人は仲良しである。

 悪戯を一緒にしたり遊んだり、唯一の友達で姉弟なのだ。そして、唯一お互いの言いたいことがわかる。



 セラフィールはよろよろとハイハイしていることに気づいたアドラオテルは聞く。


『どうしたんだい?』



『ちょっと、疲れた。休みたい』


『こんな所で休んだら見つかるよ。………仕方ないなあ。少し浮いていいよ』



『むう、浮くなっていったり浮いていいって言ったりなんなのよ』



『優しいだろ、俺。それより階段だ。登ろう』



『階段の上はぎょくざのまだよ。ママたちの部屋はこっち』



『ちぇっ、ゆーずーが聞かないなあ、ぎょくざのまのふかふか椅子に座りたいんだよ』



『そんなことしたらじーじに怒られちゃう____!』




 そこまで話して、2人はすぐさま廊下に置いてあった鉢植えに隠れた。たくさんの兵士たちが走ってきたからだ。




 「子供達がいないそうだ!」



 「ラフェエル皇帝がご乱心だ!」



 「探さないと殺されるぞ!」




『……………』



『……………』




 バレた、起きたのバレた。

 これは悠長に朝のお散歩を満喫している場合じゃない。



『…………セラ』



『……………うん』




 「!?なんだ!?」



 セラフィールが手を掲げると、走っていた男達の身体が宙に浮いた。そして、天井に何度か頭をぶつける。気を失ったのを確認してぽい、と投げ捨てた。



『ないす、セラ!』



『もう、自分でやりなさいよ』



『俺は魔法が苦手なんだ。剣は使えるけどな!』



 そう言ってドヤ顔をするアドラオテルに呆れたセラフィールは、さっさと先に進む。




『聞けよ!』



『それよりも、もう少しだよ。怒られる前に早く行こう』



『ちっ、あーあ、20歳以上の美人侍女と遊びたいなあ』



『0歳なのにませすぎよ。変態』



『へんたいってなんだ?』




『あんたのことよ』



『それほどでも~』




 アドラオテルは照れる。そうじゃないけれど、突っ込むのも面倒くさい。セラフィールはそこまで考えて、ふわり、浮かんだ。もう疲れた。とっとと行こう。なんだったらアドラオテルは置いていこう。



『あっ、待てよ!りーだーは俺だぞ!』



『りーだーってなによ』



『いちばんえらいんだぞ!』



『……………』




 そう言って身体を起こして威張るんだから、見ていて疲れる。男の子ってみんなこんなに面倒くさいのかしら。



『わたくしはそんなの知らないもん。それより、本当に置いてくよ?』



『んなっ、まてよ!』




 ツン、とそう脳内に言うセラフィールの言葉にカチンときたアドラオテルも浮いた。ふよふよと浮いていると____見慣れた後ろ姿を見かける。



 紅銀のポニーテール、簡易な服装。…………間違いなく母親のアミィールだ。もう鍛錬の時間なのか…………とにかく、見つかったら怒られ____!




 そう思っていた矢先に、アミィールがバッ、と振り返った。セラフィールとアドラオテルはばっちり見つかったのだ。








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