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龍神の末裔達

 




 個性的な子供達と愛する妻。俺は幸せだ。……………けれど、幸せばかりではなく。





『……………すう』



『くぅ…………』



 「……………………」




 庭園の地下にある『龍化部屋』。そこの中心には____紅銀の大きな龍と、同じく紅銀のとても小さな龍が身を寄せあって寝ている。



 ____双子に産まれたからとはいえ、龍神は龍神なのだ。アミィール様が龍化すると子供達も簡単に龍になれた。いくら血を薄めようと、それは変わらないんだ。



 悔しいさ。悔しいけど___それも、アミィール様なのだ。だから俺は前ほど絶望していない。


 それよりも。



『ギャオー!』



 そう騒いでいるのは____群青色のとても小さな龍。俺にまとわりついてくるこの紅銀ではない龍を見ても驚くことはしない。むしろため息がでる。





 「はあ……………アド、お前も寝なさい」



『ぎゃーおー!』



 「…………」




 群青色の龍____俺の息子・アドラオテルはそう腑抜けた鳴き声を上げて俺の頭を甘噛みしてくる。痛くはないが、唾液が凄い。ダラダラ流れているのが血か唾液かわからない。



 …………それはともかく。




 セオドアは自分の頭を齧っているアドラオテルに触れながら優しい声で言う。



 「アド、寝るんだよ。寝なきゃだめだ」



『呪い』や『代償』が半減だとしても、それでも苦しいはずだ。俺が解決策を見つけるまで、しっかり休んで欲しい。



 けれどもそれを聞いたアドラオテルは俺の頭から離れて、ぶんぶんと激しく頭を振る。何度もそのやり取りをしたら、最終的に龍から裸の人間姿に戻った。



 「あぶ!」



 「………はあ、アド。我儘かい?」



 「べー!」



 …………6ヶ月この子と向き合ってわかった。この子はとても頑固なのだ。1度やらないと決めたらやらない。きっとこの様子じゃ龍化ももうしないだろう。



 こうなってしまっては何も聞かないと悟ったセオドアは持っていたシーツでアドラオテルを包んだ。アドラオテルは『ハッ』と鼻で笑って満足気にする。




 ____本当に仕方ない子だな。



 こんな生意気な子まで可愛いと思う俺も大概か。仕方ないだろう?可愛いものは可愛い。アミィール様によく似ているから、というのが最初強かったけれど、今では『アドラオテル』だから好きと思ってしまう。



 一年前の俺はただアミィール様の『任務』を辞めさせることしか考えてなかったのに、もうそんなことを忘れてこの子を愛しているんだ。



 この子だけじゃない。


『くぁ………』




 とても小さな紅銀の龍が大きく欠伸をした。キョロキョロと辺りを見渡して、俺を見つけると目を輝かせて飛んできた。



 「セラも起きたのかい?おはよう」



『ギャオオ!』



 「うわっ」


 セラフィールはそう1つ叫んでから紅銀の光を纏い、小さくなって裸で飛びついてきた。………アドラオテルだけでなくセラフィールも俺は大事なんだ。どちらも俺の大切な子供達。黄金色も紅色も緑色も大好きな色だ。




 「ふふ、今シーツで温かくしてあげるからね。


 アド、悪いけど少し大人しくしてて」



 セオドアは近くのゆりかごにアドラオテルを優しく寝かせてセラフィールの身体をシーツで包む。セラフィールは擽ったそうに身を捩って花のように笑う。




 ……………この子達が苦しまないように、この笑顔がなくならないように、解決策を見つけなければ。



 この子達だけじゃない。俺の愛おしい御方も____



『んん………セオ様……』




 丁度、その愛おしい御方であるアミィール様が目を覚ました。アミィール様は眠そうに目を細めてから、俺と子供達を見る。やっぱり、美しいな。龍のアミィール様も。



 セオドアはそこまで考えてふ、と笑ってから優しい声で言った。










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